著者
鈴木 隆夫 荒堀 忠久
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1036, pp.637-642, 1981-12-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 4

ケイ石耐火物の主成分であるシリカの安定相は, 867℃以下で石英, 867°-1470℃でトリジマイト, 1470℃以上でクリストバライトである. しかし, 高炉熱風炉や他の炉でも, ケイ石耐火物を1470℃以下のトリジマイト安定温度域で使用した場合でも, しばしばクリストバライトの生成が認められる. そこで, この原因及び転移機構について検討した.本研究で使用したケイ石耐火物も, トリジマイト-クリストバライトの転移温度は1470℃である. しかし, この試料に熱風炉のダスト (Fe2O3 41.9wt%, Al2O3 34.0%, SiO2 20.4%) を添加してトリジマイト安定温度域で熱処理したところ, クリストバライトに転移した. これは, ダスト中のAl2O3成分の影響によるものであり, Al2O3によるシリカの転移への影響を定量的に検討した結果, Al2O3の添加量増大とともに1470℃の転移温度が低下し, 1470℃以下でもクリストバライトの生成温度域が存在することが明らかになった. この領域は, ケイ石耐火物中のCaOの添加量によっても変化する.