著者
荒木 ひさ子
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-12, 2004-03-01

幼児期に親から虐待を受けた子どもは,その時の悲しみや怒りなどの感情を抑圧する。このことが後の神経症やその他の問題の原因となり,個人と社会に深刻な影響をもたらす。ヒットラーは子ども時代に父親から深く傷つけられ,抑圧してきた憎悪をユダヤ人に向け,ユダヤ人ホロコーストという惨禍を社会にもたらした。フロイトはヒステリーの病因が幼児期の親による性的虐待にあるという確信を得,それを理論化したが,彼自身の生まれ育った家族の神経症を追求していく中で,その理論の核心部分を修正した。これはその後の精神分析の展開方向に深い刻印を残した。