著者
田中 信男 橘 勇治 荒木 幹夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.993-998, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3

逆相クロマトグラフィー用固定相として2-(1-ピレニル)エチル基をシリカゲルに化学結合したPYE固定相と, 通常のオクタデシル固定相(C18)とを用いて,ニ重結命を含む試料の位置異性体と幾何異性体についての分離を検討した。C18固定栢の場合には疎水性相互作用による保持が主となり, 内部二重結合とくにE-形二重結合を含む不飽和化合物が大きな保持を示した。一方PYE固定相においては, 試料のπ電子と固定相のピレン環との相互作用があり, Z-形二重結合および末端二重結合を含む試料について大きな寄与が認められた。このピレン環と試料の二重結合との相互作用の大きさの傾向は, 二重結合炭素上の原子団の立体効果で説明可能である。この相互作用によってPYE固定相においてC18固定相とはまったく異なる分離パターンが得られ, この効果はメタノール含量の大きな移動相でさらに大きな寄与を示した。PYE固定相においては不飽和カルボン酸の二重結合が極性基から遠く位置する場合に大きな保持が得られ, C18固定相では分離されないリノレン酸とγ-リノレン酸も容易に分離された。