著者
髙村 正造 鈴木 勇己 荻原 真我 古市 生 渡邊 千夏子
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.79-88, 2020-05-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
30

相模湾および相模灘海域で漁獲されたマアジについて,雌雄の生殖腺の組織学的観察や生殖腺重量指数(GSI)に基づいて,性成熟や産卵期などを調べた.GSIの月別変化から,雌雄ともに3–9月にGSIの高い個体が出現し,雄は5月,雌は6月にGSI平均値が最大となった.生殖腺の組織学的観察結果から,雄では精子で充たされた精巣を持つ個体が3–7月に,雌では胚胞(核)移動期および成熟(吸水)期の卵を持つ個体が4–7月にそれぞれ出現した.当該海域における最小成熟年齢は,雄では0歳,雌では1歳であるとともに,雄では11歳,雌では23歳の成熟個体も認められた.半数成熟尾叉長は雄では188.2 mm,雌では230.6 mmであり,雄は雌よりも小型・若齢で成熟することが示唆された.年齢とGSIの関係から,高齢魚ではGSIが低下する傾向が認められたが,当該海域の本種は初回成熟・産卵後から10年以上に渡って産卵に寄与し続けていると考えられた.