著者
佐々木 功典 荻野 哲朗 川内野 和孝 西村 冨士美 奥田 信一郎
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.687-692, 1982-10-25 (Released:2011-01-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

人胃癌40例について, 捺印標本にFeulgen染色を施し, 顕微分光光度計にて細胞核のDNA量と核の面積を測定し, DNA量分布のヒストグラムと組織型とを対比し, また核面積との関係を調べた. 組織型との関係は一般に必ずしも明瞭とはいえないが, 一応下記のような傾向が伺われた. すなわち, 高分化型管状腺癌では4c前後に第1のピークを持つ2峰性パターンを示す症例が多いのに対し, 低分化腺癌では明らかなピークを示さないか, 幅広い1峰性パターンを示し, 高分化型に比し大きな分散を示す傾向がみられた. 低分化腺癌として扱われている印環細胞癌のDNAヒストグラムは急峻な立ちあがりと高いピークを有し, DNA量の分散が極めて小さく, またこのピークに一致する細胞は典型的な印環細胞の形態を示し, これら細胞がGo期にあることが示唆された. 一方, 核の大きさはDNA量に良く比例しており, 通常の細胞診にさいし, 核の大小不同性からDNA量の分散をある程度まで推定しうると考えられた.