- 著者
-
荻野 徹
- 出版者
- 日本公共政策学会
- 雑誌
- 公共政策研究 (ISSN:21865868)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.120-132, 2010-01-31 (Released:2019-06-08)
- 参考文献数
- 19
本稿は,国家公安委員会による警察庁の管理の実態を記述し,分析するものである。戦後改革の結果生まれた現行警察制度は,警察の民主的な管理と政治的な中立性の確保を2大目標とし,これを実現するため公安委員会による警察の管理を制度の根幹に据えている。すなわち,警察や検察の職歴のない者により構成された合議制機関が警察官僚機構を「管理」することにより,官僚の独善を防ぎ,政治の影響力を排除するという仕組みである。それでは,「管理」の名のもとに,公安委員会は何ができる,何をなすべきか。この点について,わかりにくさがあることは否めない。本稿では,戦後警察改革の経緯と現行制度の基本構造を概観し,公安委員会(警察行政の非専門家)による警察(専門官僚機構)の「管理」が,「大鋼方針による監督」として定式化されていることを示したうえで,国家公安委員会に焦点を当て,国家公安委員会の警察庁に対する「大綱方針による監督」なるものがどのように行われているかについて,国家公安委員会の議事録を読み解いていく。そして,大綱方針なるものは,国家公安委員会規則の制定や国家公安委員会決定などの文書の発出によるほか,委員会としての日常的な活動,すなわち警察庁幹部を交えた定例会議における議論を通じて,警察運営の基本的な方向または方針を示すことにより行われていることを明らかにする。