著者
菅原 慎矢
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

制度開始から15年以上がすぎ、介護保険は様々な問題を孕みながらも進展を広げてきた。しかしその実態と効果に関しては、データの不足を背景として、十分な実証分析がなされてきたとは言いづらい。この状況に対して、2015年以降、国際的にみても珍しい規模のビッグデータである介護レセプトデータが、研究者に提供されることになった。本研究は、まずこのデータへの先進的なデータサイエンス手法の応用を通じ、エビデンスに基づく効果的な科学的介護を提案する。さらにこの知見を社会実装するための考察を行う。2019年度の研究内容としては、動学パネルモデルの一つであるPanel VARモデルを用いて、介護サービスへの支出と要介護度の動学的な関係を明らかにする研究を、大阪経済大学石原庸博氏と共同で行った。本研究については、東京経済大学におけるセミナー発表と、関西計量経済学研究会における発表を行った。本研究については英語論文を投稿準備中である。また、2018年に行っていた、この論文は介護レセプトを用いて介護保険サービスの組み合わ せの効果を検証した論文"What composes desirable formal at-home elder care? An analysis for multiple service combinations"が査読付き英文誌 Japanese Economic Reviewに受理された。また、最近の研究から得られた知見を日本語でまとめた論文「わが国における高齢者介護制度の課題と展望」を、季刊個人金融に掲載した。一方で、2020年度における研究のためにデータの申請を行い、介護DBに関して利用の許可を得た。