著者
瀬尾 信吾 菅原 由至 清戸 翔 河合 昭昌 松本 英男 平井 敏弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.542-547, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
36

72歳,男性.肛門痛を主訴に近医を受診し,同医で肛門管壁に刺さった魚骨を摘出された.症状は一旦消失したが,2カ月後に再燃したため当科を受診.視診で粘膜面に異常はなかったが,CTで肛門管右側の括約筋層内に高吸収な針状構造物と周囲組織の濃度上昇を認め,魚骨の遺残と診断し外科的摘出の適応とした.腰椎麻酔下に観察したが,肛門管から直腸粘膜に刺入点を認めなかったので,MDCT画像を基に歯状線部粘膜を切開し,内肛門括約筋の外側に接して頭側に鉗子を進め探索し13mm長の魚骨を摘出した.術後,粘膜切開部直下に膿瘍形成を伴ったので,7日目にseton法によるドレナージを加えた.膿瘍消退後に瘻管化したドレナージ創を切除し,49日目に自宅退院した.異物による消化管穿通例の中でも肛門部での発生は稀だが,大多数は肛門周囲膿瘍を形成し,膿瘍切開により異物が摘出されていた.自験例のように肛門括約筋への直達操作を要したものは稀であり報告する.