著者
菅谷 和宏
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2-60, 2017

<p> 本稿では1991年の第1回調査から2016年の第6回調査までの25年間におけるサラリーマンの生活と生きがいの変化について追う(第1節)。生きがいの保有率は、第2回調査の78.4%から一貫して減少し、第6回調査では初めて5割を切り43.6%(前回比▲12.3%)まで低下した。生きがいの意味合いとして、「生きる喜び」「生活の活力」「生きる目的」「自分自身の向上」が減少し、「生活のリズム」「心のやすらぎ」が増加している。生きがいを感じる事柄は、「仕事」が32.5%から18.0% に減少し、「ひとりで気ままにすごす」が7%から17.5%に増加している。くわえて、心の安らぎが得られる場が減少し、「どこにもない」とする人が増えている。生きがいを得られる場は「仕事」から「家庭」に移る一方で、「家族の理解・愛情」は減少している。さらには、自ら他人とのつながりを求めない人が増えている。新たな生きがいの場を自ら見い出す積極性も持たず、ただ、生きがいの喪失に繋がる現状が浮かび上がる。</p><p> このような中、団塊の世代が本格的に就業から引退し、高齢者の仲間入りを始める。そこで、次に第1回調査(40~44歳)から第6回調査(65~69歳)まで団塊世代の生活と生きがいの変化を追ってみた(第2節)。驚くことに、他の世代とは異なり、生きがいの保有率は第1回調査から第6回調査では59.0%と同じ水準を維持していた。定年退職後も「経済的ゆとり」を持ち、仕事に代わる「趣味」などに生きがいを見い出している団塊の世代がいる。 生きがいの意味や内容は年齢と共に変化し、男女では生きがいの意味や内容が異なっていた。 人口減少による労働力不足が懸念される中、高齢者の知識と経験を社会へ活用することが求められる。また、雇用形態が多様化する中、生きがいを持ち続けられるような社会の仕組み作りが必要で あり、今後の日本の超高齢化社会への対応と活性化に繋がるものと考える。</p>