著者
菅谷 和寿
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.405-409, 2010 (Released:2010-06-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

硫酸ピッチ等廃棄物中のクマリンの分析方法について検討した.その結果,クマリンは,遮光下においてアルカリ性水に抽出し,そのアルカリ性水を酸性化後,再合成したクマリンをジクロロメタンで溶媒抽出することで,ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により定量性良く分析できた.クマリンはアルカリ性水溶液中でcis-o-ヒドロキシケイ皮酸陰イオンに加水分解し,紫外線によりtrans-o-ヒドロキシケイ皮酸陰イオンに異性化する.異性化したtrans体からはクマリンは生成しないため,異性化を防ぐ遮光が必要であった.この方法で硫酸ピッチ等廃棄物を分析したところ,硫酸ピッチから51~72 mg/kg,アルカリスラッジから0.16~0.43 mg/kgのクマリンが検出され,不正軽油製造に関与したものであることが推定された.