著者
中西 幹郎 菅谷(大鶴) 真子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.729-739, 2004-10-31
被引用文献数
2

午前中晴れた夏の日(午前晴天日)の午後に東京湾周辺で発生する雲列と,関東平野規模の局地気象および午後の降水との関係を調べるため,午前晴天日を静止気象衛星の可視画像に基づいて6つに分類し,特徴的な雲列が現れた2つのタイプと快晴に相当するタイプを解析した.東京湾を囲むような雲列の日は,相模湾沿岸で南寄りの風,鹿島灘沿岸で東寄りの風が吹き,午前晴天日の中でも格別,平野で午後に降水がある日(平野降水日)になりやすかった.平野降水日は850〜500hPaの上空の湿度が高く,14時頃までに山岳域で積乱雲が発生した.雲列は,この積乱雲やそれに伴う発散風が1つの誘因となって発達し,雲列の直下,多くは埼玉県南部に降水をもたらした.ほかの2つのタイプの日は,上空の湿度が平均的に低く積乱雲が発生しにくいだけでなく,関東平野全域で南寄りの風が吹いて山岳域の積乱雲や発散風の影響が平野に及びにくいため,平野降水日にほとんどならなかった.