著者
田村 伸行 菊池 健人 守屋 雅隆 小林 忠行 島田 宏 水柿 義直
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.423, pp.47-52, 2010-02-15
参考文献数
10

我々は,強磁性体(FM)のリード電極を持つ単一電子トランジスタ(SET)の磁気抵抗比(MRR)に関する報告を行う.常伝導体(NC)の島電極を持つ強磁性単一電子トランジスタ(FM/NC/FM-SET)と超伝導体(SC)の島電極を持つ強磁性単一電子トランジスタ(FN/SC/FM-SET)をそれぞれ作製し,測定した4状態のIV特性からMRRを算出した.4状態とは,SETのIV特性のしきい値電圧が最小(SET-ON状態)または最大(SET-OFF状態)と,リード電極間の磁化方向が平行状態または反平行状態とを組み合わせた,SET-ON状態・平行状態,SET-ON状態・反平行状態,SET-OFF状態・平行状態,SET-OFF状態・反平行状態である.FM/NC/FM-SETのMRRは強磁性体の偏極率から計算される理論値の範囲内だったのに対し,FM/SC/FM-SETのMRRは理論値を超える値となった.また,これらのSETでは,島電極の材料によらず,SET-OFF状態のMRRが,SET-ON状態のそれよりも増大する,磁気抵抗比増大効果が確認された.磁気抵抗比増大の発生メカニズムとして提案されているコトンネリングによるモデル計算を行ったところ,実験結果をおおよそ再現した.