著者
菊池 理紗
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.7-12, 2021-03-31

本論文は,より好ましい文章を書くための教育や支援への応用を目的として,やり取りを前提とした文章に焦点を当てて,これまでの文章産出研究について検討した。その結果,やり取りを前提とした文章においては,書き手も読み手も文章の内容よりも表現に相対的に重きを置くことと,読み手との関係性や関係継続の予期が文章に影響することが明らかになった。また,これらの知見をふまえ,山川・藤木(2015)の文章産出プロセスモデルに,外的表象を媒介しない循環と読み手の反応に対する推測という2点を追加して,修正した文章産出プロセスモデルを提案した。このモデルに基づくと,やり取りを前提としたより好ましい文章を書けるようになるための教育の方法として,外的表象を媒介しない循環,すなわち,事前にメモを作成せずに行える支援が考えられる。本論文では,そのような支援の一例として,書き手が文章産出を行う際の方向性を示すことを提案した。今後は,方向性として提示すべき情報の詳細や情報の提示の方法についてさらなる検討が望まれる。