著者
原田 靖 菊沢 悠斗
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地磁気は宇宙放射線や太陽風が地球表面に侵入することを防いでいる.しかし,地磁気が逆転するとこれらが地表に到達し,その放射線の影響で地球上の生物に絶滅や突然変異などの影響を与えるのではないかと考えられている.本研究ではA Concise Time Scale 2016と, Hounslow et al., 2018 から得られた地磁気逆転数データと Alroy, 2010 及び Rohde and Muller, 2005 を用いた遺伝子レベルの多様性データとの相関を調べることを目的とする.検証の結果,この内 375Ma と 250Ma の大量絶滅イベントと逆転頻度の相関が見られた.さらに Shaviv, 2003 の鉄隕石の宇宙線照射年代との比較をすると,250Ma,375Ma で宇宙線が強くなった時期と生物絶滅から回復した時期が一致し,かつ 375Ma(Alroy,2010), 250Ma (Alroy,2010, GTS2016) の地磁気逆転頻度との同期が見られる.さらに一億年スケールで両者共に移動平均を取ると最小値と極大値,極小値を取る位置が一致していることがわかった.これらのことから地球磁場が弱くなったことにより宇宙線放射線が増え,そのことが生物の遺伝子の変異を促したと解釈できるが,170Maの磁場逆転頻度の極大値の時にはこの現象が起こっていない.地磁気逆転頻度データの問題点として,ジュラ紀後期以降の古地磁気極性データは海洋底地磁気縞模様由来であるのに対して,三畳紀以前は陸上の地層由来であるのでデータに連続性がなく,各研究によってもばらつきがあるため,信憑性が低い.また,遺伝子レベルの多様性は海洋属のデータであり,陸上生物よりも太陽風や宇宙放射線の影響は低いと考えられる.