著者
菊谷 愛
出版者
滋賀大学教育学部附属中学校
雑誌
滋賀大学教育学部附属中学校研究紀要 (ISSN:18809456)
巻号頁・発行日
no.53, pp.118-125, 2011-06-20

日本の文化は特徴として, 基本的に伝えるべきことを言葉ではなく形で残し伝え継いでいく文化といわれている。書かなくても話さなくても「こうするもの」とか「察すること」を大事にして伝わってきた日本文化は非常に高度ですばらしいものであると言える。特に家庭分野では, 衣食住の自立や幼児などの様々な人との関わりの学習においてこの日本文化が根幹にあって目に見えない部分で深く関連していることを感じる。ただ昨今の若い世代では,形として残っている日本文化の由来や本質をよく知らないために, どのように食したらよいのかわからないから食べないとか, 恥をかかない着こなしを求める姿も多々あるように感じる。そこで,形として残された衣食住に関わる日本文化を理解に導くことができないかと考えた。ここでは生徒があまり関心を持たない和装の文化に焦点をあて,和装と洋装の比較をグループで話し合うことによって理解を深めさせたり,ペアで浴衣の着付けをし合うことで身につけた知識と技術を定着させたりするなど伝える学習活動を重視した。これが衣服への関心となってさらには衣生活の自立を果たそうとする主体的な態度につながるものと考えた。この学習を通して,衣生活の自立に欠かせない衣服の選択,着用,手入れ,補修,製作の技術を定着させ,さらに身につけた知識と技術を家族や友人,小学生などと幅広く伝え合うことで自ら衣文化を伝承してしていってくれることを願いたい。