著者
井上 哲志
出版者
滋賀大学教育学部附属中学校
雑誌
滋賀大学教育学部附属中学校研究紀要 (ISSN:18809456)
巻号頁・発行日
no.63, pp.10-15, 2021-03-31

本校では,全国に先駆けた総合学習「BIWAKO TIME」の取り組みを,現在に至るまで守り続けている。近年は,その探究的な学習のあり方を,各教科の学習にも役立てることで,双方の質的な向上を図る研究に取り組んできた。双方の学習内容を関連付けて生徒を指導する中で,新しい学習指導要領の総説にもあるが,教科等横断的に学ぶ際に大切なことは,日々の授業において生徒が学習内容を「概念的に理解」することであるということが分かってきた。 そこで,学習指導において「重要概念」や「関連概念」を整理し,それらをもとにユニットプランをたてる国際バカロレアの授業づくりを参考に,授業改善に取り組みたいと考えている。これまで,言語活動例と教材との関連から授業計画を立ててきたが,身につけさせたい資質・能力をベースに,教材や言語活動を選ぶことで,生徒が学習内容を概念的に理解できることを目標とした指導計画を立てたい。そして,この方法が生徒の深い学びを促し,学習内容が教科等横断的に生きてはたらくことを実証したいと考える。
著者
永田 郁子
出版者
滋賀大学教育学部附属中学校
雑誌
滋賀大学教育学部附属中学校研究紀要 (ISSN:18809456)
巻号頁・発行日
no.63, pp.16-25, 2021-03-31

本年度の本校の研究主題は「探究的学習活動を通した,グローバル社会に生きてはたらく資質・能力の育成―教科の見方・考え方を生徒が活用できる,深い学びの提案―」であり,「グローバル社会に生きてはたらく資質・能力」として15の力が設定された。その「見方・考え方」のなかに「国や郷土の文化や自然を探究する」が挙げられている。 筆者は昨年度より,本校の学校教育目標「郷土を愛し,世界へはばたく心豊かな生徒の育成」を土台にし,「現代的な諸課題に関する教科等横断的な教育内容」のうち「伝統や文化に関する教育」「郷土や地域に関する教育」を重要視し,その中で国語科が担うべき教科としての「見方・考え方」の育成について研究を推進してきた。 本稿では,第2学年での実践を中心にとりあげている。古典作品に表れた「ものの見方・考え方」を生徒にとらえさせ,本校で目指す資質・能力の育成との関連を図りたい。
著者
北村 拓也
雑誌
滋賀大学教育学部附属中学校研究紀要 (ISSN:18809456)
巻号頁・発行日
no.58, pp.116-123, 2016-03

本校が取り組む「BIWAKO TIME」は,32年に及ぶ長い歴史を持ち,全校体制で取り組んでいる総合学習である。時代とともに少しずつ修正と改善を重ねながら現在に至っており,「郷土である滋賀」を学習フィールドとし,「学び方を学ぶ」調査研究型の学習を継続している。生徒たちが卒業後の人生においても活用できる「生きる力」を養う学習の場として,本校独自の研究課程である「情報の時間」とともに,必修教科等の学習で得た知識や体験を生かし,より活用できる「学び」へと再編することや,学習指導要領に則した授業時数に対応させつつ展開してきた。昨年度より本校の研究と絡めて,「論理的」をキーワードにBTを進めている。特に本年度は,「計画を立てる」,「調査研究をする」,「思考する」,「整理する」,「発表する」といった各場面の中で,「論理的」を意識し学習に取り組めるように活動内容を組み立てた。時に,思考ツールの活用に力を入れ,一昨年よりより使い始めた「ピラミッド・ストラクチャー」の活用については,昨年度より書いてある情報量が増えており,昨年度のBTの経験や情報の時間の学習が活かされいると感じた。また,本年度は三角ロジックも本格的に活用した。その中で,「主張」と「論拠」と「事実」をつなげということに関して,課題が見られた。
著者
菊谷 愛
出版者
滋賀大学教育学部附属中学校
雑誌
滋賀大学教育学部附属中学校研究紀要 (ISSN:18809456)
巻号頁・発行日
no.53, pp.118-125, 2011-06-20

日本の文化は特徴として, 基本的に伝えるべきことを言葉ではなく形で残し伝え継いでいく文化といわれている。書かなくても話さなくても「こうするもの」とか「察すること」を大事にして伝わってきた日本文化は非常に高度ですばらしいものであると言える。特に家庭分野では, 衣食住の自立や幼児などの様々な人との関わりの学習においてこの日本文化が根幹にあって目に見えない部分で深く関連していることを感じる。ただ昨今の若い世代では,形として残っている日本文化の由来や本質をよく知らないために, どのように食したらよいのかわからないから食べないとか, 恥をかかない着こなしを求める姿も多々あるように感じる。そこで,形として残された衣食住に関わる日本文化を理解に導くことができないかと考えた。ここでは生徒があまり関心を持たない和装の文化に焦点をあて,和装と洋装の比較をグループで話し合うことによって理解を深めさせたり,ペアで浴衣の着付けをし合うことで身につけた知識と技術を定着させたりするなど伝える学習活動を重視した。これが衣服への関心となってさらには衣生活の自立を果たそうとする主体的な態度につながるものと考えた。この学習を通して,衣生活の自立に欠かせない衣服の選択,着用,手入れ,補修,製作の技術を定着させ,さらに身につけた知識と技術を家族や友人,小学生などと幅広く伝え合うことで自ら衣文化を伝承してしていってくれることを願いたい。