著者
萩原 章子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.103-116, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
22

初中級の日本語学習者は,インタビューなど即時に文の産出を求められる場面では,既習の文型を用いて複文を構成するのが困難であることが報告されている(近藤2004等)。これは学習者にとって,接続助詞など文に結束性をもたらす要素は音声から把握しにくいことを示唆する。その理由としては,文の中央部分に位置する文法要素は記憶に残りにくいという現象(serial order effect)が挙げられる。本研究では,学習者に複文を音声で聞かせ,できるだけ正確に再生させる誘導模倣の手法を用い,複文のどの部分が再生困難なのかを実証した。実験の結果,学習者にとって接続助詞は他の文法項目と比較し再生が困難であり,中でも学習期間が短く複文の中央付近に位置する接続助詞は特に再生が困難であることが明らかとなった。また,文全体の意味理解に直接影響を及ぼさない要素は,文末であっても正確に再生されにくい傾向も観察された。