著者
萬屋 賢人 菅原 俊治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.1-9, 2011-11-30

本論文では,視野範囲内の先行車が低速の際に車間距離をとる渋滞緩和車を導入し,エージェントシミュレーションにより,渋滞緩和への効果とその解析結果について述べる.高速道路の交通流は渋滞に至る過程で,渋滞が起こりうる交通密度に至っても,交通流の流量が増加し続けるメタ安定相を経る.メタ安定相は,流量が最大となる状態であり,渋滞の初期状態からメタ安定相へ戻すことができれば,渋滞の緩和や渋滞の発生を遅らせることができると考えられる.そこで渋滞緩和車を渋滞緩和エージェントとしてモデル化し,交通流のモデルである拡張 Nagel-Schreckenberg モデルに加えシミュレーションにより実験したところ,実際に渋滞状態からメタ安定相に移行できることを確認した.さらに詳細な解析の結果,渋滞緩和車を連続して配置することがメタ安定相への移行に重要であることが分かった.また渋滞緩和車を導入しない場合の平均速度と渋滞緩和車を導入したときの通常車両および渋滞緩和車の平均速度を比較したところ,渋滞緩和車となり速度を落としても,平均速度は向上することが分かった.