著者
落合 浩史
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

非ウイルスベクターの遺伝子発現は一過的であり、その主要因DNAの転写抑制(silencing)である。我々はこれまでに、hydrodynamics法を用いた遺伝子導入後に観察されるsilencingがCpGモチーフのメチル化および、ヒストン蛋白質の修飾非依存的に生じ、silencingを受けたプラスミドDNA(pDNA)が再活性化し得ることを示している。このことから、持続的に発現する遺伝子治療用DNAの開発において、「silencingの回避」に加えて「積極的な活性化」が必要であると考え、外来DNA特異的転写活性化システムを利用した持続発現型DNAの開発を行った。酵母GAL4蛋白質の配列特異的DNA結合ドメインと単純ヘルペスウイルスVP16蛋白質の転写活性化ドメインの融合蛋白質(GAL4-VP16)を用い、GAL4認識配列をレポーター(ルシフェラーゼ)遺伝子pDNAに付加するとともに、GAL4-VP16発現pDNAにも付加し、podiyibr feedbackによる両pDNAの持続的な発現を指向した。両pDNAをHeLa細胞に共導入した結果、ルシフェラーゼ遺伝子の発現が持続化した。特に、GAL4認識配列を両PDNAの発現カセットの上流に加えて、下流にも付加することで、CMVプロモーター制御下の高い発現レベルを低下させること無く維持することに成功した。さらにマウス肝臓において、肝臓特異的アルブミンプロモーター制御下の発現の消失半減期を大きく延長することに成功した。以上の結果は、持続的に発現する遺伝子治療用DNAの開発において「積極的な活性化」の重要性を示唆するものである。