著者
落合 菜知香 門脇 正史 玉木 恵理香 杉山 昌典
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.209-214, 2015 (Released:2016-01-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

ヤマネGlirulus japonicusの野生下での食性の季節変化を明らかにするため,糞分析を行った.長野県にある筑波大学農林技術センター川上演習林内に,ヤマネ調査用に164個の巣箱を設置し,2011年5月から10月まで約10日間隔で計16回,巣箱を点検して糞を回収した.回収した糞は60%エタノールで十分にほぐし,10×10のポイントフレーム法を用いて各月にその交点1,000点上の内容物を実体顕微鏡下(40倍)で観察し,各餌項目の出現割合を月ごとに比較した.交点上の内容物は節足動物,果皮他,マツ属の花粉,その他の花粉,種子2種に分類された.春には花粉,初夏は節足動物,晩夏から秋には種子を含む果皮などの植物質の餌が多く出現し,食性が季節的に変化していることがわかった.また,どの時期も糞中に節足動物と植物質の餌項目が出現し,特に節足動物は全ての月で25%以上の割合で出現したことから,ヤマネにとって重要な餌資源だと考えられる.