著者
蒔田 真司
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

【目的】閉塞性動脈硬化症患者の虚血肢に人工炭酸水による足浴を連日行い、足浴時血流量増加反応や下肢虚血症状への影響を検討した.【方法】閉塞性動脈硬化症(Fontaine分類11度)と診断された患者8例の虚血肢8肢を対象とし、人工炭酸水による足浴(約15分間、下腿遠位1/3まで浸水)を1日1回3週間連日で行った(炭酸水群).炭酸水は三菱レイヨン・エンジニアリング社製人工炭酸泉製造装置で作製し、CO_2濃度約1000ppm、水温35℃とした.足浴開始日と、1、2、3週間後に、症状優位側の下肢で足浴時皮膚血流量の変化を測定した.測定は、レーザードブラ血流計(アドバンス社製、ALF-21)を用いて足背部で行った.下肢の自覚症状は冷感・しびれ感を対象とし、血流量測定時10イントスケールで症状の強度を評価した.また、同温の淡水を用いた足浴を8例で行い同様に評価した(淡水群).【結果】炭酸水群では足浴時に最大277-800%(平均429%)の有意な皮膚血流量増加がみられた.また、冷感、しびれ感などの自覚症状が全例で軽減し、症状の強度は、1週間後6.2点、2週間後3.8点、3週間後2.8点(平均)で有意に低下した(p<0.01).初回足浴時の血流量増加率は平均で270%であったが、2週間後には341%、3週後には362%と有意な増加がみられた(p<0.05).一方、淡水群では、足浴中の最大皮膚血流増加率が173%と小さく、症状の改善度は低かった(3週間後平均8.5点).【結語】人工炭酸水の足浴で血流増加反応が得られた,また、炭酸水足浴治療の継続が、閉塞性動脈硬化症患者の冷感、しびれ感などの安静時虚血症状を改善させることが示唆された.