著者
蓑島 良一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.1, no.8, pp.857-862,824, 2001-08-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
57
被引用文献数
1

リパーゼは油脂工業において最も重要な酵素であり, 微生物リパーゼは商業化され, 一部油脂製造用として工業的に用いられている。近年, 基質特異性の高いリパーゼを用いた構造油脂の生産の検討などが多く行われ, たとえば, 生理活性が高いとされるEPA, DHAや中鎖脂肪酸, 新規油糧原料など多くの油脂原料が基質として利用されている。しかし, リパーゼは高価であり, また長期間使用による活性の低下が起こりやすく, 製造コストが比較的高い。コスト低減法としては, リパーゼを安価に製造したり, リパーゼの安定性を高めたり, リパーゼを活性化するなどの方法がある。リパーゼの安定性を高める方法としては, 安定化剤添加, 化学修飾, 固定化, 遺伝子操作などがあげられる。また, リパーゼの安定性に大きな影響を与える因子としては, 反応系の水分量, 反応温度や基質油の精製度, 過酸化物価などがあげられ, これらを調節することで安定性が向上する。リパーゼ反応の工業化例としては, 脂肪酸製造, カカオ代用脂, 中鎖・長鎖脂肪酸のトリアシルグリセロールなどがあげられる。実際の反応では, 化学反応と比較して基質特異性が高いことやマイルドな条件による反応で風味が良いなどの利点があるが, 精製度が低いリパーゼを用いると, 酵素中の不純物が反応油へ影響を及ぼすこともある。