著者
蔡 小瑛
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.61-66, 2020-03-20 (Released:2020-05-13)
参考文献数
12

本稿は,筆者が参加した台湾で行ったemicなアプローチによる「既発表よい看護師研究」の結果をeticなアプローチ,つまり,トラベルビー看護理論の視点から解析し,あわせて,「よい看護師」探求の意義を考察するものである。台湾がん患者から見た「よい看護師」の特質は,ケア技術よりも患者とのよい人間関係を築くことのできる看護師であった.また,「視病猶親」(古来の諺:病人を自分の身内として接する)という大きなカテゴリーがよい看護師の要素として見られた.ケア対象者を一人の人間として見るという徳の倫理を追求する「よい看護師」を台湾の患者が求めていることがわかった.それをトラベルビー看護理論から見れば,文化の違いはあれど,文化的普遍性をもつものもあることがわかった.今後の看護教育,実践および研究において無視のできない必要不可欠な課題になるであろう.
著者
蔡 小瑛
出版者
梅花女子大学看護保健学部
雑誌
梅花女子大学看護保健学部紀要 = Baika Women's University Research Bulletin-Faculty of Nursing and Health Care (ISSN:24320447)
巻号頁・発行日
no.9, pp.15-28, 2019-03-21

本研究は看護学科3年次で開講している精神看護学実習の学習過程に沿って、学生の精神障がい者の社会復帰施設実習での学びを明らかにし、今後の精神看護学の講義や精神看護学実習について、示唆を得ることを目的とする。同意を得られた25名学生の実習記録等を,トラベルビーの視点に基づき質的記述的分析方法で分析した。結果は二つのカテゴリーにまとめられた。一つ目の【人間対人間の関わり方】にはA≪【看護師という人間】 対 【病人or看護を必要とする人間】≫、B≪治療的な自己利用(治療道具としての自己活用)≫が含まれた。二つ目の【Humanizationへの道のり】にはC≪対象者のおかれた状況への理解および共感への近づき≫、D≪その人に即した支援≫が含まれた。看護学生はⅠ.医療モデルの限界を知る、Ⅱ.「人間対人間」としての利用者との協働関係構築のあり方、Ⅲ.共感の範囲の拡大を学び得た。今後の地域ケア整備にあたって、看護学生の専門知識と同等に対象者の生活知を重視しなければならない。対象者との協働関係の確立にあたって、トラベルビー看護理論は今後の地域精神看護活動を展開するには欠かせない貴重な指針となろう。