著者
小野 美喜 望月 啓央 甲斐 博美
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.56-62, 2021-03-20 (Released:2021-05-29)
参考文献数
19

本研究の目的は、特定行為を含む診療に関わる診療看護師が、職務上経験した倫理的問題を把握することである。日本NP教育大学院協議会が資格認定した診療看護師249名を対象とし、無記名自記式質問紙調査を行い54件の回答を得た。その結果、「患者の身体拘束・鎮静をすること、しないこと」看護の倫理原則である「患者の権利擁護」や「十分なケアを提供できない人員配置」の問題を高い頻度で経験していた。さらに、医師との信頼関係の構築や、看護師の上司や同僚との対人関係の問題に悩んでいた。診療看護師が抱える倫理的問題は、臨床看護師と同様の結果であり、看護師として倫理的感性が結果に反映されていると考えられる。加えて鎮静に関しては、診療看護師の経験として重要な問題となる。診療看護師は、医師や看護師との関係性に問題を抱え、教育の課程領域による問題の違いも示唆された。大学院修士課程での看護倫理教育をさらに発展させる必要がある。
著者
児玉 聡
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.101-102, 2023-03-20 (Released:2023-04-14)
参考文献数
6
著者
鶴若 麻理
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.86-88, 2021-03-20 (Released:2021-05-29)
参考文献数
5
著者
蔡 小瑛
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.61-66, 2020-03-20 (Released:2020-05-13)
参考文献数
12

本稿は,筆者が参加した台湾で行ったemicなアプローチによる「既発表よい看護師研究」の結果をeticなアプローチ,つまり,トラベルビー看護理論の視点から解析し,あわせて,「よい看護師」探求の意義を考察するものである。台湾がん患者から見た「よい看護師」の特質は,ケア技術よりも患者とのよい人間関係を築くことのできる看護師であった.また,「視病猶親」(古来の諺:病人を自分の身内として接する)という大きなカテゴリーがよい看護師の要素として見られた.ケア対象者を一人の人間として見るという徳の倫理を追求する「よい看護師」を台湾の患者が求めていることがわかった.それをトラベルビー看護理論から見れば,文化の違いはあれど,文化的普遍性をもつものもあることがわかった.今後の看護教育,実践および研究において無視のできない必要不可欠な課題になるであろう.
著者
田中 真木 小西 恵美子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-55, 2021-03-20 (Released:2021-05-29)
参考文献数
7

「よい看護師国際共同研究プロジェクト」の一部として本稿の第一著者がインタビューした日本のがん患者14名の語りから、よい看護師が患者に向き合う姿勢を論考した。論考では、上記プロジェクトのデータ分析における抽象化の過程で沈んでいった患者の生の語りと、語る際に患者が見せた表情や口調、仕草に光をあてている。患者たちは、自分たちがおかれた立場がいかに弱いものかという心身両面での脆弱性を述べ、その脆弱性をポジティブな方向へ転換させてくれる看護師が、患者にとってのよい看護師であるとした。その語りは具体的かつさまざまな表現で、なぜその看護師をよい看護師と認識したのかを述べていた。看護ケアの受け手である患者の生の声は看護師が学ぶべきことを指し示しており、そこに光をあてる意義を論じた。
著者
Chris GASTMANS 八尋 道子 宮内 信治 小西 恵美子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.59-70, 2022-03-20 (Released:2022-04-13)

過去20年間の看護倫理の文献をふりかえると、顕著なことが2つ認められます。1つは、データ収集を基本とする実証研究が非常に多いいっぽう、思考を基本とする議論研究がとても少ないことです。もう1つは、議論研究であっても、生命倫理の4原則に依拠する議論が支配的で、看護ケアの重要な側面への関心が相対的に薄いことです。この傾向は今後も続くのでしょうか。私の講演は、この問題提起から出発し、看護実践の核はケアであること、ケアは患者・家族・医療者等の人々が関わりあいながら進むプロセスであること、したがって看護倫理の基盤はケアに根差す必要があることを述べます。そしてその視点に立って、看護倫理の枠組みの基本を提示します。まず、看護ケアの重要な側面をなす次の3つを、看護倫理の枠組みの背景として位置付けます。すなわち、ケアに関係する人々(患者・家族・医療者等)が具体的に感じ・経験する「生きられた体験」、これら当時者が対話し解釈し理解を共有しあって患者本人のケアニードに対する適切な答えを見つけていく「対話的解釈的プロセス」、および、ケアする義務とよいケアを規定する「規範的基準」の3つです。その背景のもとに、倫理的な看護実践において常に配慮する必要のある主要概念として、「脆弱性」、「ケア」、「尊厳」の3つを特定します。この3つの概念に基づき、看護の倫理的な本質は、人間の「尊厳」を可能な限り維持、保護、促進するために、人間の「脆弱性」に対応する「ケア」を提供することである、と主張します。
著者
大西 香代子 中原 純 箕輪 千佳 有江 文栄
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
pp.20220425b, (Released:2022-06-24)
参考文献数
16

目的:倫理審査を受けた看護学研究者の倫理審査に対する評価とその特性との関連及び望ましいあり方を明らかにする。方法:全国の看護系大学90校の看護学研究者900名に質問紙調査を実施した。個人属性、組織変数のほか、倫理審査の評価18項目、望ましいあり方11項目について5段階で回答を求めた。重回帰分析により尺度としての妥当性を確認し、特性との関連を検討した。結果・考察:審査結果が妥当だった等の肯定的評価の一方、手続きの大変さも感じていた。審査の肯定的評価には、審査基準の公表や結果を1カ月以内に出すこと、審査へのサポート体制があることなどが関連していた。また、科学的妥当性への言及や同意取得の手続き等について、研究者の理解不足も示唆されたが、委員になるための研修制度や資格が整備されることを望んでいた。結論:看護学研究者に対する研修だけではなく、倫理審査に対する組織の取組みの改善が重要である。
著者
田中 樹
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.80-81, 2020-03-20 (Released:2020-05-13)
参考文献数
5
著者
道上 勝春 大出 順
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:1883244X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.45-51, 2018

<p>A病院における精神科看護師の倫理的行動の実態を明らかにすべく、看護師と准看護師の158名に看護師の倫理的行動尺度と倫理的行動で問題に感じていることついての自由記載の欄を設けた質問紙調査を行った。その結果、役職では一般群より役職群のほうが倫理的行動尺度の得点と精神科歴では経験年数10年以下の看護師より経験年数11年以上の看護師のほうが倫理的行動尺度の得点が高く、倫理的な行動がとれるよう円熟していくのには、10年という経験年数が一つの区切りとして考えられる。また、自由記載は25のコード、10のサブカテゴリ、4のカテゴリとなり、カテゴリは【感情のコントロールとケアの質】【職場環境によるジレンマ】【時間と人員の不足によるジレンマ】【看護者自身の資質】と分類された。精神科病院という患者の行動を制限せざるを得ない療養環境において、日々悩みながらも看護師個々の倫理観を養い、職場環境作りをしていくことが重要と考える。</p>
著者
村松 妙子 片山 はるみ
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
pp.19015, (Released:2020-09-10)
参考文献数
32

本研究の目的は、看護学生の倫理的感受性質問票(ESQ-NS)と道徳的感受性テスト(MST)の比較によって、ESQ-NSの有用性を検討することである。平成27年4月から平成30年11月までの4年間の縦断調査を行った。反復測定による一元配置分散分析の結果、ESQ-NSの合計得点および、3つの下位因子中2因子「患者の意思尊重」(pp<0.001)で有意差を認め、1年生に比べ他のすべての学年で平均値が高くなっていた。また、相関分析の結果、ESQ-NSとMSTの一部の下位尺度は有意な相関を示したことから、2つの尺度は類似した概念を測定しつつも、異なるものであることが示唆された。ESQ-NSは学年と有意に関連があり、高学年の学生は1年生に比べ高い倫理的感受性を示していることから、看護基礎教育の中で育成され向上していくと考えられている、学生の倫理的感受性を測定するツールとしての有用性を示したと考える。
著者
葛生 栄二郎
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-11, 2013-03-15 (Released:2019-07-12)
参考文献数
13

普遍的原理やルールに依拠しないケア倫理は個別的・関係論的要素を倫理的考慮に入れることができる一方で、普遍性がなく、道徳理論として致命的な欠陥を負っているという批判がある。こうした批判は、一面においてノディングスの誤読に由来するとともに、また他面において、彼女の狭いケア倫理理解に由来している。本稿では、ケア倫理に対する様々な誤解を明らかにするとともに、ケア倫理は、原理に依拠したリベラルな正義倫理、文化伝統に依拠したコミュニタリアンの徳倫理のいずれの限界をも超えることのできる普遍化可能性を持っていることを論じる。
著者
山本 真弓 鷲尾 昌一 入部 久子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:1883244X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.77-85, 2015-03-20

本研究の目的は、看護基礎教育における基礎看護学実習前後の看護倫理教育の実態を明らかにすることである。2007年5月〜7月看護基礎教育機関685施設の教育担当者に45項目の倫理教育実態調査を行った。結果、有効回答は85施設、回答率12%(内訳:看護学校56、短大3、大学26)。基礎看護学実習の開講時期は1・2年次が多く、実習前の倫理教育の報告は72施設(84.7%)に比べ、実習後の倫理教育48施設(56.4%)と少ない結果であり、実習後の臨床経験に基づく教育の機会が不足していた。また看護倫理教育は科目として構築されておらず、構築する必要あり53(62%)、必要ない13(15%)、どちらでもない16(19%)、無回答3(4%)であり、大学の教育担当者と看護専門学校の教育担当者間の科目構築の必要性に関する認識にはp値0.07と有意な差はないが、差の傾向が見られた。回答者の年齢は51±8.6、臨床経験年数13±7.4である。