著者
藁科 智恵
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.27-52, 2015-06-30

二〇世紀初頭ドイツにおいて行われた「宗教的アプリオリ」という概念をめぐる議論は、多くの神学者、哲学者を惹き付けた。本稿では、ルドルフ・オットーの「宗教的アプリオリ」という概念をエルンスト・トレルチが展開した議論との対比において明らかにする。この概念における両者の共通点、相違点を明らかにすることにより、オットーが『カント・フリースの宗教哲学』『聖なるもの』において、当時取った態度、問題の解決方法の独自性がより明らかとなるだろう。このことは、ドイツにおける宗教研究を当時の精神的情況との関係において理解する上でも非常に重要となる。さらにこの議論は、当時の学問における認識と認識外のものをめぐる緊張を孕んだ関係、その学問自体を取り囲む精神的情況を明らかにする手がかりとなるだろう。