- 著者
-
徳田 貴則
谷川 昇
藤井 弘史
大迫 茂登彦
生田 剛士
澤田 敏
- 出版者
- The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
- 雑誌
- 日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.1, pp.14-16, 2010
症例は25歳の男性.アイスピック状の凶器で左側胸部を刺され,当院に搬送された.CTでは左冠状動脈分枝の約1 cm末梢の上行大動脈の後壁内に造影剤の貯留像を認めた.心タンポナーデによる急性循環不全解除の目的で,緊急避難的に剣状突起下開窓心嚢ドレナージを行った.ドレナージ後,持続的な出血を認めなかったため,緊急での上行大動脈損傷部の修復術は行わなかった.経過観察中,損傷部に仮性瘤の形成を認めたため,受傷後27日目に損傷部の修復術を行い,術後経過は合併症なく良好であった.穿通性の大動脈損傷では微細な損傷であっても急速に増大する仮性瘤を形成することがあり,常に動脈瘤形成に留意する必要がある.