著者
濱路 政嗣 河野 智 北野 満 松田 光彦
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.358-362, 2006-11-15
被引用文献数
3

感染性腹部大動脈瘤は腹部大動脈瘤全体の0.06〜3.4%,感染性動脈瘤の18%を占める.われわれは,合併症を伴う腎動脈下の感染性腹部大動脈瘤を2例経験し,診断および治療上の問題点を検討した.症例1:75歳,男性.糖尿病,高血圧あり.全身倦怠感,発熱,腹膜刺激症状があり急性虫垂炎と診断されたが,虫垂に異常なく閉腹され,CTで腎動脈下の仮性大動脈瘤と診断された.後腹膜に多量の血腫があり,瘤の内部に悪臭のある膿様の液体が貯留していた.症例2:50歳,男性.高血圧,糖尿病,肝硬変,HCV抗体陽性で食道静脈瘤を合併していた.全身倦怠感,熱発,水様性下痢,血小板減少のため入院し,CTで腎動脈下の感染性動脈瘤と診断された.大動脈分岐部右側の黒色の仮性瘤の内部は,多量の血栓と黒色の液体が貯留していた.術前血液培養はそれぞれKlebsiella pneumoniae,Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)が陽性であったが,瘤壁や周囲組織の培養は陰性であった.2例とも準緊急手術であったが,局所のデブリドマンと解剖学的血行再建で幸い良好な経過を示した.しかし,感染性腹部大動脈瘤に対して,局所感染状況を把握しつつ適切な手術時期を決定することは容易ではないと考えられた.
著者
尾形 敏郎 金子 達夫 大林 民幸 佐藤 泰史 村井 則之 垣 伸明 森下 靖雄
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.317-319, 1999-09-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11

症例はエホバの証人信者の45歳の女性で, 動悸および息切れを主訴とした. 右室流出路狭窄を伴うバルサルバ洞動脈瘤破裂の診断のもとに, 手術を施行した. 術中所見からは, 右室二腔症と心室中隔欠損症を合併したバルサルバ洞動脈瘤破裂であった. 無輸血下にバルサルバ洞動脈瘤切除およびパッチ閉鎖, 異常筋束切除および右室流出路パッチ拡大, 心室中隔欠損直接閉鎖を行った. 先天性心疾患の中でバルサルバ洞動脈瘤破裂と成人の右室二腔症はおのおの頻度が少なく, 両者の合併はさらに稀である. 両者を合併したエホバの証人信者の手術症例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
著者
入澤 友輔 都津川 敏範 吉鷹 秀範 田村 健太郎 石田 敦久 近沢 元太 毛利 教生 平岡 有努 松下 弘 坂口 太一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.287-290, 2014 (Released:2014-10-23)
参考文献数
8

症例は64歳男性.半年前より胸痛を認め,大動脈弁狭窄症と診断されて,当科紹介受診となった.患者はエホバの証人信者であり,無輸血手術を希望した.そのため胸骨切開を行わない小切開大動脈弁置換術(MICS AVR)を行う方針とした.手術は右第4肋間開胸アプローチし,機械弁ATS AP360 20 mmで大動脈弁置換を行った.手術直後のHb値は11.2 g/dlであった.経過良好で術後17日に退院となった.エホバの証人信者のように無輸血で手術を行わなくてはならない場合,胸骨を切らずにアプローチするMICS AVRは,出血も少なく有用な方法と考えられた.
著者
桑原 史明 平手 裕市 森 俊輔 高野橋 暁 八神 啓 臼井 真人 宮田 義彌 吉川 雅治
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.280-283, 2009-07-15 (Released:2010-04-07)
参考文献数
14

症例は44歳,女性.不明熱の原因検索のため紹介された.血液培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出し,心臓超音波検査で大動脈弁に疣贅を認め,Duke criteriaに基づき感染性心内膜炎(IE)と診断した.バンコマイシン(VCM)とイセパマイシン(ISP)により治療を開始したが,その後も高熱が続き,皮疹も出現したため,抗生剤をテイコプラニン(TEIC)に変更したが効果が見られず,最終的には,第22病日よりリネゾリド(LZD)に変更した.LZDに変更して1週間後には解熱し,心内膜炎に伴う塞栓症による血管炎も軽快した.大動脈弁膜症による心不全を薬物療法によって管理しながらLZDを28日投与し,その時点で,その副作用と思われる貧血を認めたためLZDの投与を中止してレボフロキサシン(LVFX)の内服に変更した.感染の再燃がなく,機械弁による大動脈弁置換術を施行した.LZDは手術直前に投与し,術後も15日間継続した.その後,LVFXの経口投与に切り替えて術後35日目に退院した.退院後も1年間感染の再発がなく経過している.リネゾリドはMRSA心内膜炎の治療法の一つとして有効であると考えられるが,その投与法や投与期間に関しては,さらなる検討が必要である.
著者
濱路 政嗣 河野 智 北野 満 松田 光彦
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.358-362, 2006

感染性腹部大動脈瘤は腹部大動脈瘤全体の0.06~3.4%,感染性動脈瘤の18%を占める.われわれは,合併症を伴う腎動脈下の感染性腹部大動脈瘤を2例経験し,診断および治療上の問題点を検討した.症例1:75歳,男性.糖尿病,高血圧あり.全身倦怠感,発熱,腹膜刺激症状があり急性虫垂炎と診断されたが,虫垂に異常なく閉腹され,CTで腎動脈下の仮性大動脈瘤と診断された.後腹膜に多量の血腫があり,瘤の内部に悪臭のある膿様の液体が貯留していた.症例2:50歳,男性.高血圧,糖尿病,肝硬変,HCV抗体陽性で食道静脈瘤を合併していた.全身倦怠感,熱発,水様性下痢,血小板減少のため入院し,CTで腎動脈下の感染性動脈瘤と診断された.大動脈分岐部右側の黒色の仮性瘤の内部は,多量の血栓と黒色の液体が貯留していた.術前血液培養はそれぞれ<i>Klebsiella pneumoniae</i>, Methicillin-susceptible <i>Staphylococcus aureus</i> (MSSA)が陽性であったが,瘤壁や周囲組織の培養は陰性であった.2例とも準緊急手術であったが,局所のデブリドマンと解剖学的血行再建で幸い良好な経過を示した.しかし,感染性腹部大動脈瘤に対して,局所感染状況を把握しつつ適切な手術時期を決定することは容易ではないと考えられた.
著者
中村 浩己 畑 隆登 津島 義正 松本 三明 濱中 荘平 吉鷹 秀範 近澤 元太 篠浦 先 大谷 悟
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.268-271, 2000

悪性高熱 (MH) の high risk group で, さらに術中にアンチトロンビンIII (AT III) 欠乏症を早期に疑い回避しえた準緊急冠動脈バイパス術 (CABG) の1例を経験した. 症例は67歳, 男性. 既往歴として頻回におきるこむらがえりあり. 紹介医通院時より, 筋痙攣に対してダントロレン50mg/day を経口投与されておりCKも高値を示していた. 不安定狭心症にて当院に紹介され, CABG (4枝) を施行した. 手術にさいし, ダントロレン25mg内服および麻酔導入前に同160mgを静脈内投与した. 術中, 内胸動脈採取のさい, ヘパリン1ml投与後のACT延長が14秒と通常例 (約60秒) より著明に短縮していたため, AT III欠乏症を疑い, AT III製剤を1,500単位投与した. 術中・術後経過ともに良好であった. MH, AT III欠乏症ともに希ではあるが, ひとたび発症すると重篤な合併症となる疾患であるため, 予測・予防および早期発見・早期治療開始が重要である.
著者
吉田 正人 向原 伸彦 大保 英文 尾崎 喜就 本多 祐 金 賢一 溝口 和博 井上 武 深瀬 圭吾 三里 卓也 志田 力
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.61-65, 2006-03-15
被引用文献数
1

2000年1月から2003年12月までの4年間に当院で施行した80歳以上の大動脈弁置換術(AVR)症例29例を高齢者群とし,その手術成績ならびに中期成績について検討した.使用した弁は,全例,生体弁(Carpentier-Edwards PERIMOUNT)であった.また,同時期に施行された75歳以下の生体弁によるAVR症例36例を対照群として,2群間で比較検討を行った.平均年齢は高齢者群で82.9歳,対照群で71.6歳であり,病変は高齢者群では大動脈弁狭窄(AS)症例が79%と対照群の53%に比較して有意に多く,ASの程度も高度であった.術前合併症としては,高齢者群では糖尿病と腎機能障害(Cr≧1.5)の頻度が有意に高く,緊急手術例も高齢者群24%,対照群6%と高齢者群で緊急手術の頻度が有意に高かった.術後合併症は,48時間以上の長期の人工呼吸器管理を要した症例と一時的にCHDFを必要とするような腎機能障害をきたした症例の頻度が高齢者群で有意に高かったが,病院死亡は高齢者群6.9%,対照群5.6%と差はなく,3年生存率も高齢者群89%,対照群78%と差は認めなかった.80歳以上の超高齢者に対するAVR症例では術前の重症度が高かったが,その手術成績ならびに遠隔成績は良好であり,外科的治療を積極的に考慮すべきであると考えられた.
著者
久米 悠太 平松 健司 長嶋 光樹 松村 剛毅 山崎 健二
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.154-160, 2016-07-15 (Released:2016-08-19)
参考文献数
23

[背景]小児期の人工弁置換術には術後の脳関連合併症や血栓弁,成長に伴うサイズミスマッチなどの懸念があり可及的に弁形成術を行うことが望ましいが,やむを得ず弁置換術となる症例が存在する.15歳以下の孤立性僧帽弁疾患(孤立性僧帽弁閉鎖不全症,孤立性僧帽弁狭窄症)に対する僧帽弁形成術,僧帽弁置換術の遠隔期成績を検討した.[対象]1981年1月から2010年12月までに当院で僧帽弁形成術を行った30例(P群:男児21例,平均年齢4.6±4.6歳,平均体重13.4±8.9 kg),および機械弁による僧帽弁置換術を行った26例(R群:男児9例,6.2±4.6歳,平均体重16.4±11.2 kg)の計56例を対象とした.平均追跡期間9.3±7.8年,最長27.7年であった.また,孤立性僧帽弁閉鎖不全症(iMR)群と孤立性僧帽弁狭窄症(iMS)群とに分けて追加検討を行った.[結果]P群,R群ともに周術期死亡例はなく,遠隔期にR群で4例を失った.再手術はP群で6例,R群で5例に認めた.脳関連合併症は両群とも遠隔期に1例ずつ認めたのみで,人工弁感染は認めなかった.10年時および20年時での生存率はP群100%,100%,R群88.0%,80.0%であり有意差が見られた(p=0.043).10年時および20年時での再手術回避率はP群77.6%,77.6%,R群77.0%,70.0%,10年時における脳関連合併症回避率はともに100%であり有意差は見られなかった.iMR群とiMS群の10年時における生存率は100%と53.3%であり有意差がみられた(p=0.001).iMR群とiMS群の10年時における再手術回避率は77.1%と64.3%,20年時では72.0%と64.3%であり有意差は見られなかった.[結語]15歳以下の孤立性僧帽弁疾患に対する僧帽弁形成術,僧帽弁置換術の遠隔期成績は,懸念していた機械弁置換術後の脳関連合併症回避率や再手術回避率も僧帽弁形成術と有意差なく,小児期の僧帽弁手術として許容されるものであった.特に孤立性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁手術の遠隔期成績は良好であった.孤立性僧帽弁狭窄症においては孤立性僧帽弁閉鎖不全症に劣らない再手術回避率であったが生存率には懸念が残る結果となった.
著者
斎藤 雄平 添田 健 瀬戸崎 修司 原田 寿夫 三村 麻郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.106-109, 2009
被引用文献数
1

収縮性心膜炎は通常,慢性的な経過をたどることが多いとされる.心嚢水貯留に対するドレナージから化膿性心膜炎となったのを契機に,急速に収縮性心膜炎を呈した症例に対して,感染活動期に心膜剥皮術を行い,1期的に治癒せしめることができたので報告する.症例は82歳,男性.心嚢水の精査目的で心嚢ドレーンが留置されたが,その7日後に膿性の排液を認めた.細菌培養でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され,抗生剤が投与されたが,全身倦怠感,全身の浮腫,呼吸困難が出現するようになった.Swan-Ganzカテーテル検査にてdip and plateau型の右室圧波形を認めた.CTにて膿性心嚢水の貯留が疑われ,心窩部小切開にて再度心嚢ドレナージを施行したが,血行動態の改善はみられず,乏尿となってきたため,十分なドレナージが必要と判断し,胸骨正中切開によるアプローチにて開胸した.心臓周囲には膿の貯留を認め,心膜は著明に肥厚しており収縮性心膜炎の所見であった.人工心肺補助下に心膜を剥皮し,十分な洗浄後,1期的に閉鎖した.術直後より血行動態は著明に改善した.ドレーンを利用した持続洗浄と抗生剤の投与を行い,術後32日目に退院した.本例のように,感染性心膜炎では急速な経過で収縮性心膜炎へ移行することがあり,適切な外科的治療を念頭に置いた注意深い観察が必要と思われた.また,可及的な心膜切除と持続洗浄を行うことで1期的な治療が可能であった.
著者
吉田 貞夫 軸屋 智昭 平松 祐司 島田 知則 榊原 謙 厚美 直孝 三井 利夫 堀 原一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.433-436, 1993-09-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
16

高位腹部大動脈閉塞症は陰萎, 間歇性跛行などの慢性虚血症状を呈する場合が多いとされる疾患である. 今回著者らは, 急速に増悪した両下肢および骨盤内臓器の虚血症状を主訴とした高位腹部大動脈閉塞症例を経験したので報告する. 患者は57歳, 女性. 軽度の間歇性跛行を自覚していたが, 突然両下肢および骨盤内臓器の重症虚血症状が出現し, 血管造影で高位腹部大動脈閉塞症と診断された. 腎動脈上遮断, 血栓摘除, 腎動脈下遮断でY型人工血管置換術を行った. 術中 Laser Doppler 血流計測でS状結腸の重篤な虚血を証明しえた. また, 術前から認められていた右腎動脈狭窄の急速な進行を認め, 術後に経皮経管動脈形成術を必要とした. 高位腹部大動脈閉塞症の急性増悪は主側副血行路の閉塞が原因と考えられた. また, 腎動脈病変を伴う場合, たとえそれが軽症でも同時血行再建等の適応があるものと考えられた.
著者
田村 清 田崎 大 白井 俊純 大島 永久
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.363-366, 2006-11-15
参考文献数
9

感染性心内膜炎において,化膿性脊椎炎の合併は比較的まれであるが,致死的な合併症であることが知られている.われわれは,化膿性脊椎炎から感染性心内膜炎を診断し治療した2症例を経験したので報告する.症例1は60歳,男性.症例2は52歳,男性.ともに発熱と激しい背部〜腰部痛を主訴に来院した.MRI検査で腰椎の化膿性脊椎炎と診断された.また,うっ血性心不全と弛張熱から感染性心内膜炎と診断された.2症例とも適切な抗生剤投与にもかかわらず,弁の破壊の進行およぴ10mm以上の大きさの可動性疣贅が認められたため手術を行った.症例1は2弁置換術(大動脈弁および僧帽弁),症例2は大動脈弁置換術を行い,良好な経過を得た.2例とも術後4週間の抗生剤投与により完全にCRPが陰性化したのちに退院したが,化膿性脊椎炎に対しては,その後もさらに1〜2カ月間の経口抗生剤投与を行った.レントゲンによる骨所見の改善とCRP正常化の維持から化膿性脊椎炎の治癒と判断し,3カ月後に抗生剤を中止した.その後,感染性心内膜炎,化膿性脊椎炎の再燃を認めていない.化膿性脊椎炎などの菌血症がある場合,感染性心内膜炎の合併の可能性を考慮すべきである.また,骨所見の改善するまでの長期の適切な抗生剤投与を行うことを推奨する.
著者
柴田 利彦 山田 正 石原 寛治 鈴木 範男 永来 正隆 藤井 弘一 末広 茂文 佐々木 康之 上田 真喜子
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.217-220, 1994-05-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

Systemic lupus erythematosus (SLE) に合併する血管病変は主に細小動脈の閉塞性病変とされており, 大血管に拡張性病変を合併することは希である. 今回SLEに合併した若年者腹部大動脈瘤を経験したので報告する. 病理所見では大動脈 vasa vasorum の増生・内膜肥厚と炎症性細胞浸潤を認め, 動脈硬化性の動脈瘤とは異なる像を呈していた. 本症例の腹部大動脈瘤は vasa vasorum の増生・内腔狭窄に起因して生じた可能性が示唆された.
著者
織田 禎二 宮本 忠臣 白石 義定 朴 昌禧
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.861-864, 1991

小児の開心術では通常,輸血が不可欠であるが,ときに親の宗教上の事情により輸血が拒否されることがある,われわれは"エホバの証人"のシンパを親にもつ1.4歳の小児の開心術で同様の経験をした.無輸血での心臓手術を希望する親を説得して,母親の血液に限り輸血の許可を得たため,Lilleheiらの"controlled cross circulation"(交差循環)をこの母子間で行い,心室中隔欠損孔パッチ閉鎖,僧帽弁再建術に成功した.この交差循環は母親の総大腿動脈よりroller pumpで脱血して患児の上行大動脈へ送血し,患児の上下大静脈より落差脱血にてreservoirに導いた血液を別のroller pumpで母親の大腿静脈へ送血して行った.交差循環時間は212分であった.術後は母子とも発熱を認めたほかはきわめて順調に経過し,術後2.2年経過した現在もきわめて経過順調である.
著者
打田 裕明 小西 隼人 本橋 宜和 垣田 真里 禹 英喜 佐々木 智康 三重野 繁敏 大門 雅広 小澤 英樹 勝間田 敬弘
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.120-123, 2013

薬物使用歴のある成人に発症した,三尖弁位感染性心内膜炎に対して,弁形成術を施行した1例を報告する.症例は20歳男性.発熱を主訴に受診し,肺膿瘍を合併した三尖弁位感染性心内膜炎と診断され,抗生剤による加療が行われたが,炎症所見の遷延を認めた.血液培養から,黄色ブドウ球菌を検出,心臓超音波検査では三尖弁に疣贅と三尖弁閉鎖不全を認めた.肘部に多数の注射痕を認め,詳細な問診を行ったところ,覚醒剤の自己注射歴が判明した.抗生剤治療に抵抗性の感染性心内膜炎に対して,三尖弁形成術を行った.経過は良好で,術後2週間で独歩退院したが,予定された外来の受診はなく,術後も覚醒剤所持で逮捕されている.覚醒剤の再使用,術後の投薬管理の点から術式に一考を要した.
著者
梅末 正芳 松崎 浩史 園田 拓道 松井 完治 塩見 哲也 芦原 俊昭
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.157-161, 2007-05-15
被引用文献数
1

症例は76歳,男性.平成17年5月21日左回旋枝の完全閉塞による急性心筋梗塞(後側壁)に対しシロリムス溶出性ステントを挿入された.残存する左前下行枝近位部の90%狭窄病変にに対し冠動脈バイパス術を施行することとなった.手術1週間前よりチクロピジン,手術2日前よりアスピリンを休薬し,ヘパリンを手術5日前より手術前まで静脈内持続投与し,6月9日に心拍動下に左内胸動脈を左前下行枝へ吻合した.手術当日夜よりヘパリン持続点滴を開始し,手術翌日よりアスピリンおよびチクロピジンを開始したが,術当日に急性心筋梗塞を発症した.緊急心臓カテーテル検査では,バイパスグラフトは良好に開存していたが左回旋枝に留置したステントの完全閉塞を認め,同閉塞に対しカテーテル治療を行い血流再開を得た.薬剤溶出性ステント挿入後はステント血栓症予防のために最低3カ月のチクロピジン投与および無期限のアスピリン投与が推奨されているが,出血性疾患の合併や外科手術のために抗血小板剤の休薬を要する状況も想定される.本報ではそのような患者における抗血小板療法,抗凝固療法につき検討した.
著者
羽賀 將衛 大谷 則史 清川 恵子 川上 敏晃
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.293-296, 1998-09-15
被引用文献数
6 4

過去3年間に当科において, 破裂性腹部大動脈瘤を除く, 腹部大動脈および腸骨動脈領域の血行再建術は, 全例, 腹膜外到達法により施行した. このうち36例を傍腹直筋切開, 41例を臍側方から肋骨弓に向かう横切開により行った. 両群とも, 良好な術野の展開を得るため, オクトパス<sup>®</sup>リトラクターを用いた. 術後の経口摂取開始までの日数, 鎮痛剤を使用した日数, および退院までの日数は, 傍腹直筋切開群よりも腹部横切開群において有意に短かった. 腹膜外到達法による腹部大動脈, 腸骨動脈領域の手術において, 腹部横切開は, 術後の早期離床と在院日数の短縮を図るうえで有用と考えられた.
著者
河内 寛治 中田 達広 浜田 良宏 高野 信二 角岡 信男 中村 喜次 堀内 淳 宮内 勝敏 渡部 祐司
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.344-346, 2002-09-15
被引用文献数
1

上行大動脈がporcelain aortaを呈したAVR,CABG,腹部大動脈瘤手術の心臓・大血管系の3同時手術を施行した.73歳女性で,左室-大動脈圧較差60mmHgを示し,RCAの4A-V枝に90%の狭窄を認めた.大動脈弁および上行大動脈の著しい石灰化を認め,腹部に5cmの壁在血栓を伴うAAAを認めた.手術はAVR,CABG,AAAの3同時手術を施行した.CABGのグラフトは大動脈での吻合のない右胃大網動脈を用いた.送血管は上行大動脈より行い,右房脱血にて体外循環を開始した.石灰化のない大動脈より心筋保護(CP)液を注入,大動脈遮断して,AVR施行した.冠動脈入口部の石灰化のために,選択的にCP液を注入することは難しく,大動脈切開部の石灰を除去し縫合閉鎖してから大動脈より注入した.ついでRGEAとRCAの吻合を行い,大動脈遮断解除し体外循環を終了し,AAAの人工血管置換術を行った.翌日抜管でき,現在NYHA1度で経過している.
著者
田淵 篤 正木 久男 稲田 洋 森田 一郎 石田 敦久 菊川 大樹 遠藤 浩一 村上 泰治 藤原 巍
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.260-263, 2000

症例は26歳, 男性. 3年前にアメリカンフットボールの競技中に左膝靱帯損傷をきたし, 保存的加療を受けた. 2カ月前から左足の冷感, 知覚障害を自覚し, 当科に入院した. 大腿動脈造影では左膝窩動脈の高度狭窄, 前脛骨および後脛骨動脈の閉塞が示された. CT, MRI検査では左膝窩動脈内腔に突出した腫瘤, 解離などが考えられた. 手術は後方到達法で施行, 左膝窩動脈外側からの圧排はなく, 切開を加えると狭窄部位は白色血栓であった. 血栓を摘除し, 膝窩動脈切開部は自家静脈にてパッチ閉鎖した. 狭窄性病変の病理組織学的所見は, フィブリンを主体とした器質化血栓および内膜からなり, 血栓および内膜内に肉芽組織の進入が観察された. 本症の成因として鈍的血管損傷後の治癒過程で壁肥厚, 血栓形成をきたし, 狭窄したと考えられた. 術後経過は順調であった.