著者
菊池 利彦 藤井 素晴
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.184-184, 2011

近年、地域に根ざした演劇活動が日本各地で広がりつつある。このことから演劇という営みが、今日の地域社会に対して少なからぬ役割を果たすであろうことがうかがわれる。そもそも演劇とはそこで発せられる言葉とそこでつむがれる文脈を、演者と観衆がともに想像/創造する営みであり、また時間と空間をともにした人びとが、同一の表象を共有したときにはじめて可能となる社会性を帯びた営みである。戦後日本の歩みとは地域コミュニティが空洞化する歴史であった。こうした状況を反省するとき、すぐれて社会性を内包する演劇という営為が示唆することは少なくないはずである。本研究は、千葉県いすみ市で活動する演劇集団に注目し観察調査を実施することで、演劇が今日の地域社会に果たす役割を具体的に把握し、また、その特質を導出することを目的とする。本研究で得られた結論は以下のように要約される。演劇とは、「コンテクストの共有」を通して、そこに参加する人びとの関係性を強化するものである。そして、演劇が地域において展開される場合、それは共同体を再構築する可能性を有している。それゆえに地域に根ざした演劇は、大きな社会的・今日的価値を持ったものといえる。