著者
藤井 龍和
出版者
智山勧学会
雑誌
智山學報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.163-170, 1988-03-31

「心理学」という用語は、日本が明治維新になって、富国強兵と殖産興業の旗下に、欧米化を目指して、世界に雄飛する近代国家を樹立していく「洋学」の過程の中から生まれた。それ以前の封建幕藩体制下で、擬似心理学的「心学」なる漢学の学問があったが、これは、科学的な現代心理学の系譜とは異なる東洋的心理学の土壊から出て来たものである。 「心理学」はギリシャ以来の哲学的心理学たる精神哲学(mental philosophy)の系統を引くもので、又、その訳である。このことを、アルバート・ヴェレク(Albert Wellek, 1950)は、「心理学は、母なる哲学の娘として生れた。」と言った。現在の「心理学」にあたる英語は、psychologyであるが、これは初め、西周によって、その心学の素養から「性理学」と訳語された。