著者
藤本 良知 北村 裕展 藤仙 佳秀 馬場 忠雄 細田 四郎 岡部 英俊
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.416-420_1, 1988

瘍性大腸炎(以下UC)の経過中に大腸粘膜生検組織よりCytomegalic Inclusion Body(以下CIB)を認めたので,その病的意義について免疫組織学的に検討した.当科のUC58例中,男2例,女1例の計3例にCIBの局在を認めた.いずれも罹病期間は長く,かつ重症例で,その内2例ではステロイドホルモン,アザチオプリン等の免疫抑制剤を投与していた.生検材料のホルマリン固定パラフィン切片でCytomegalovirus(以下CMV)抗原について抗CMV抗体を用い酵素抗体Peroxidaseantiperoxidase(以下PAP)法にて検討した.UCにおけるCIBの局在は潰瘍の近傍並びに小血管内皮細胞に認めた.これらの所見は潰瘍の成因および増悪に関与していると考えられた.CMVはHerpesVirus科に属しており,成人の約70%に不顕性感染が認められており,ステロイドホルモン,アザチオプリン等の免疫抑制剤の投与を契機に再活性化したものと考えられる.