著者
上村 美季 箱田 明子 菅野 潤子 西井 亜紀 五十嵐 裕 藤原 幾磨
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.16-21, 2014-01-30 (Released:2014-02-14)
参考文献数
5

東日本大震災により被災した宮城県内の1型糖尿病患者79名のHbA1cの変化,及びHbA1cに影響を与えた因子を検討した.対象患者のHbA1cは,震災前の7.81±1.34 %から,震災1-2ヶ月後に8.07±1.39 %と有意に悪化し(p<0.01),3-4ヶ月後から半年後にかけて有意に改善し,震災前の水準に戻っていた.年齢,性別,居住地,震災前のHbA1c,震災後のインスリン・食糧・運動不足の有無,避難所生活の有無と,震災前から震災1-2ヶ月後のHbA1cの変化量(以下ΔHbA1c)との関係を重回帰分析で検討した結果,避難所生活のみがΔHbA1cに関与していた.避難所生活は,環境の変化が大きく,血糖コントロールがより難しかったと思われる.一方,避難所生活を送っていない患者も有意にHbA1cが悪化しており,避難所生活以外にも精神的ストレス等血糖コントロールに影響を与えた因子があると推測された.