著者
藤原 広美
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.99-108, 2016 (Released:2017-02-06)
参考文献数
34

本研究は、民主主義に必要な「言論の多様性」に米国新興デジタル・ニュース・メディア(以後、新興メディア)が貢献しているのかを実証研究を通じて分析する。本稿では、新興メディアのジャーナリズムを、主流ジャーナリズムと異なる視点や情報源でニュースを発信し、多元的民主社会で必要な「代替的公共圏」の形成に寄与する AM を継承したものと捉えている。そして、新興メディアが AMの特徴を持つならば、言論の多様性に貢献するのではないかとの仮説を立てた。ランダムに選択した米国東部地域の新興メディアに質問票による選択回答と自由回答方式の聞き取り調査を実施したところ、送り手側の実践に AM の特徴と重複するものがいくつか確認され、新興メディアが「言論の多様性」へ寄与している可能性が示唆された。また主流・新興の両者は常に対抗的でなく、同質化の傾向も示された。