著者
藤原 慶二
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.27-33, 2009-03

1970 年代に議論がはじまった「施設の社会化」は社会福祉施設の閉鎖的運営に対する問いかけがその起点であった.社会福祉施設の閉鎖的運営の傾向が顕著に表れていたのは「入所型社会福祉施設」で,地域社会との関係は特に希薄化していた.現在では社会福祉施設は「利用する」と表現されるが,この頃は「入所する」と言われていた.社会福祉施設での生活はまるで地域社会との関係を断たれたもののような表現であった.このような状況において地域社会と社会福祉施設の関係のあり方が問われるようになったのである.そして2000 年の社会福祉基礎構造改革により「地域福祉」を中心とした施策が打ち出されることとなった.これは人の生活の基盤は地域社会にあることを前提とした福祉サービスの構築が求められていることを示すのである.このことは社会福祉施設においても同様のことが言える.特に入所型社会福祉施設においてユニットケアや小規模多機能施設など新たなケアのあり方が提起されることとなった.いずれにしても現代の社会福祉の中心的役割を担っているのは「地域福祉」であることは間違いないのである.本論文では,これらの流れの中において社会福祉施設が地域福祉の一端を担うという観点から「施設の社会化」を捉えなおし,その展開と課題について考察を加えることとする.