著者
澤田 秀実 藤原 知広
出版者
くらしき作陽大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では湮滅古墳の全国集成とそれらが撮影された空中写真の収集をおこない、収集した空中写真を航空写真実体鏡とシービーエス社のMap MatrixおよびFeature Matrixをもちいた分析、図化によって、約50基の湮滅した前方後円墳について復元していった。湮滅古墳の集成は湮滅、半壊した336古墳(古墳群)、一部損壊したものを204古墳(古墳群)リストアップし、これらについて関連文献と該当する空中写真を収集し、データベース化していった。4年間で収集した空中写真は約700古墳(古墳群)分で約1500枚である。入手した空中写真は航空写真実体鏡で観察したのち撮影状況、条件の良いものを選定してデジタルアーカイブ化し、デジタル化した空中写真をシービーエス社のMap MatrixおよびFeature Matrixをもちいて分析し、墳丘形態の観察、図化を試みた。これらのソフトは2009年度から導入し、本格的な稼働が2010年度からであったが、約50基の古墳、古墳群について自動図化し、古墳の平面形態、規模を復元した。ただし、段築成や墳端など微細な墳丘形態に関しては実体観察し得るものの、自動図化では十分に反映されず課題を残した。さらに資料の一部で手動による図化を試みたが熟練技術が必要で量産し得ないことが了解された。とはいえ、これらの作業をとおして新たな資料の掘り起こしに成功し、首長墓系列の再検討に見通しを得た。首長墓系列の再検討は、2009年度までに測量調査した成果を中心に美作地方でおこなったほか、2010年度の分析、図化成果をもとに各地の前方後円墳の築造状況を見直し、古代国家形成過程における前方後円墳の役割について検討を加えた。このように本研究ではデータベースの作成、空中写真の分析、図化を中心に研究作業を進め、その成果をもとに各地の首長墓系列の再検討、さらに前方後円墳築造の論理を追究し、一部に課題を残したものの、所期の目的に対し一定の成果を得ることができた。