著者
田中 実 藤堂 具紀
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.973-978, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
15

G47Δは第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルスⅠ型で, ウイルスゲノムのγ34.5, ICP6, α47の3つの遺伝子に人為的三重変異を有する. 腫瘍細胞特異的なウイルス複製と殺細胞作用, 特異的抗腫瘍免疫の惹起力がいずれも増強されているため, 脳腫瘍に限らずあらゆる固形がんに対し高い抗腫瘍効果を示す. G47Δの第Ⅰ-Ⅱa相臨床試験は, 2009年より5年間, 再発膠芽腫を対象とし, 定位的脳手術により2週間以内に2回の腫瘍内投与が行われて, 脳腫瘍内投与の安全性が確認された. 効果を示唆する所見も複数例で観察され, 特に長期的効果は特異的抗腫瘍免疫の寄与が大きく, それを惹起して治療効果を期待するにはG47Δ投与後約半年ほどの時間がかかることが示唆された. 2015年より第Ⅱ相試験が医師主導治験として開始された. 標準治療に対するウイルス療法の上乗せ効果を検討するため, 初期治療後残存もしくは再発した, KPSが60%以上の膠芽腫患者を対象とし, テモゾロミドを併用して, 定位的脳手術により4週間間隔で最大6回までG47Δを繰り返し投与する. 2016年にはG47Δが厚生労働省の先駆け審査品目に指定され, 早期医薬品承認が見込まれる. G47Δが実用化されれば膠芽腫の治癒も可能となるため, 近い将来日本において, 悪性グリオーマの標準治療となることが期待される.