著者
斉藤 史郎 泉谷 正伸 白木 良一 石黒 幸一 藤岡 俊夫 長久保 一朗
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1777-1780, 1994-12-20
被引用文献数
1 1

症例は31歳,男性.18歳時,自慰行為によりナイロン製のつり糸を尿道より挿入してとれなくなるも放置.最近排尿痛が激化したため受診した.レントゲン写真上膀胱内に巨大な結石が存在し,超音波検査にて両腎に著明な水腎症および実質の非薄化を認めたため,入院のうえ膀胱切石術にて結石を摘出した.結石は大きさが10.5×7.5×7.5cmで重量360g.割ったところ中より全長3メートル以上にもおよぶつり糸が認められた.術後も血清 BUN 28.4mg/dl,CRTNN 4.1mg/dlと高値であり,これは術後6ヵ月経過しても改善はみられなかった.本症例は膀胱結石により腎機能障害が生じた比較的まれな症例であり,またこの膀胱結石は検索し得た範囲内では,現在までに報告されたもののうち最大のものである.
著者
塚本 拓司 藤岡 俊夫 月脚 靖彦 石川 清仁 波多野 智巳
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.949-952, 1995-04-20
被引用文献数
5

尿管動脈瘻は,ショックや敗血症を伴い,死亡率の高い重篤な疾患である.我々は有カテーテル尿管皮膚癌の患者に合併した,尿管大動脈瘻の一例を経験し,治癒し得たので報告する.患者は膀胱全摘,尿管皮膚癌術を施行した65歳の男性で,手術の6年後に両側ストーマ狭窄の為,尿管カテーテルを留置している.留置16カ月後より,左カテーテルから血尿が出現.左腎出血を疑ったが,画像診断上異常は認めなかった.しかし,カテーテル交換時に大量出血を生じ,更に,CTで尿管と大動脈の癒着が示されたことから,左尿管大動脈瘻と診断した.開腹時,約7mmの瘻孔を腹部大動脈に認めた 左腎尿管を摘出後,瘻孔部は縫合閉鎖し,更に,腹直筋筋膜前鞘を縫着した.痩孔は,膀胱全摘術により尿管と大動脈が癒着し,ここに留置された尿管カテーテルによる圧迫壊死が加わり形成されたものと推察された.術後の経過は良好で,一年後の現在も健在である.尿管動脈瘻は,最近の多くの報告で尿管カテーテル留置例に発症している.近年の尿管カテーテル使用頻度の増加により,本疾患の増加も予想され,我々泌尿器科医は尿管カテーテルの重篤な合併症として,本疾患の存在を念頭に置かなければならないと思われる.