著者
藤岡 英治
出版者
日本監査研究学会
雑誌
現代監査 (ISSN:18832377)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.21, pp.93-102, 2011-03-31 (Released:2017-05-04)
参考文献数
19

わが国監査基準における適正に表示(適正性:fairness)とは,国際監査基準に規定の監査意見の形態のうち,適正表示の枠組みにもとづくものか,それとも準拠の枠組みにもとづくものであるのかは明確ではない。一般的には適正表示の枠組みにもとづき意見表明を行っていると捉えるべきであるが,実務では監査人の責任と絡んで,基準への準拠性のみを考慮した準拠の枠組みと捉えられかねないこともある。そもそも,一般に公正妥当と認められる会計原則(以下,GAAP)に準拠すれば適正であるとした見解が示され,後にGAAP準拠のみでは適正性を満たさないGAAP準拠性≠適正性とする見解が出てきた歴史的な経緯がある。そこで本稿では,GAAP準拠性≠適正性に対して,アメリカでは,GAAPの拡大による対応,イギリスでは,GAAPの枠組みを超える経営者,監査人の積極的な判断にもとづく対応について検討し,その検討にもとづく適正性の位置づけを明らかにする。さらに,わが国の適正性のあり方について若干の示唆を示することにする。