著者
藤本 儀一
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.675-681, 2008-06

アメリカの遺伝学者、バンフレックは、乳牛における能力の遺伝について、雌よりも雄の優位性をうたっている。したがって、各酪農家の対応も、この雄の優位性のもとに行われている。本稿では、個々の酪農家の有する乳牛の系統への高能力雌牛の導入に際し、最も確実かつ有効であるのは、『高能力雌牛が屠場に行く時に、この雌牛の卵巣卵を摘出し、この卵胞を熟成し、それに高能力雄牛精液を、体外授精させ、この受精卵を雌牛に移植することである』と述べた。幸い、わが国の卵巣卵移植技術は、すでに数十年前に、農水省畜試の杉江佶博士が、世界にさきがけて行なわれ、画期的成果として評価されていた。ついで、京大教授、のち近畿大教授の入谷明博士とその一統による、屠場卵巣卵移植が公表された。この技術を用いて、国あるいは各道・都・府・県の畜産試験場が中心となって、各酪農家の雌牛に適用すれば、わが国の酪農の未来は明るくなる。現在残っている少数の精鋭酪農家が、飼養する乳牛も、いまより数段レベルをあげられ、外圧にも耐えられる経営が可能である。