著者
藤本 吉則
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.59-67, 2019-12-10 (Released:2021-10-02)
参考文献数
26

本稿は,電子政府,透明性,信頼の関係について論じる。日本は1990年代後半から電子政府の構築に取り組んだ。「透明性の高い政府」「信頼される行政」を実現することが目標として掲げられ,国民の電子的情報アクセス環境の整備が進められた。国民が政府活動を知ることは健全な民主制のためには必要不可欠のことであり,電子政府によりそのことを促進することが期待されている。電子政府と透明性,信頼の関係について,既存の研究から信頼と関係があると推測されている (1)業務効率化,パフォーマンス,(2)電子的な国民向け行政サービス,(3)市民へのエンパワーメントの三点に注目して概観する。また,電子政府の機能のうち,政府による情報提供に焦点をあて,(1)信頼と不確実性,(2)情報の非対称性,(3)参加とオープンデータについて考察を行う。情報の非対称性が解消されることで国民と政府の間に信頼関係が構築されることが期待できる。また,オープンデータの提供など情報量の増加,質の変化により,主体的な参加が促され,社会的信頼の強化につながる。電子政府,特に電子的な情報提供によって,国民と政府の間の信頼関係に好影響を与える可能性がある。一方で,電子政府による情報提供には限界があり,情報処理能力,情報への永続的なアクセス保障,情報の任意提供など検討を要する事項が存在する。
著者
藤本 吉則
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.94-103, 2010-12-25 (Released:2019-06-08)
参考文献数
42

本稿は,2000年前後から各国で導入が始まった電子政府の議論を基に,電子申請の利用件数が伸び悩んでいることや住民基本台帳ネットワークの効用が実感できないことなど,日本の電子政府の普及が円滑に進んでいないことの要因の分析,類型化を行い,これからの公共部門におけるICT利用の可能性を検討する。類型化にあたっては,電子政府の進捗段階ごとに阻害要因によって与えられる影響力が異なることを踏まえ,双方向の特徴を活用した電子政府の段階に焦点をあて,とくにデータの蓄積とその活用といったデータベースの視点を取り入れ,分析を試みる。検討を行った類型化を日本の電子政府に当てはめてみると,技術的な要因による障害より,組織的・制度的要因による影響が強いことが示される。そのため,行政改革やより有益な価値のある情報創出などに電子政府を効果的に用いるため,情報システムの導人だけではなく,制度・組織の抜本的改革をも視野に人れた電子政府の取組みの検討を進める必要がある。