著者
本多 宏明 大西 章博 藤本 尚志 鈴木 昌治
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.207-215, 2008-03-20 (Released:2009-04-01)
参考文献数
31
被引用文献数
3 3

従来よりバイオエタノールの製造には液体発酵法が広く採用されている.本法は,エタノールを蒸留した後に発生する蒸留廃液の処理が大きな問題となっている.この蒸留廃液の排出を極力抑制することを可能にする新規の発酵法としてエタノール固体発酵システムを考案した.乾燥生ごみにおいて良好に生育し,かつ糖化酵素生産に適した麹菌として麦味噌用の Aspergillus oryzae KBN650を選出した.本麹菌株の乾燥生ごみにおける糖化力の発現は,培養温度 30℃,初発水分含量 50%が最適であった.また,乾燥生ごみのエタノール固体発酵に適した酵母として焼酎酵母 Saccharomyces cerevisiae A30を選出した.本菌株は乾燥生ごみと生ごみ麹の混合割合が等量ずつで初発水分含量が60%において高いエタノール生成能を示した. 以上の知見に基づき,試料調製,生ごみ麹製造,糖化発酵,蒸留の4つの工程から構成されるエタノール固体発酵装置を製作した.この装置では,乾燥生ごみ 9.6kgから 99%エタノール換算で0.6kgのエタノールが生産され,全糖消費量に対するエタノール収率は73.6%であった.この時,従来型の液体エタノール発酵法の蒸留時に排出される蒸留廃液の排出はなく,固形残渣として排出された.