著者
藤本 満記子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学紀要 (ISSN:13455524)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.119-132, 2001-03

現在、看護学分野において、ケアリング、癒しといった概念が重要視され、患者-看護婦関係、中でも共感の重要性が改めて注目されている。しかし、看護婦は実践場面でこのことに配慮して関わっていながら、その概念の曖昧さから効果的に活用できない現状にあり、その明確化が求められている。本研究では、東北地方の某県立病院内科系病棟に勤務する看護婦31名を対象に、半構成的質問紙による面接によって、共感プロセスとその影響因子を帰納的に導き出した。また、共感プロセスの各段階と情動的共感性尺度との関連性を検討した。結果、共感プロセスは『第一印象』、『独自性の気づき』、『共感的理解』、『積極的関わり』:苦痛を和らげたい思い→関わり→患者の変化、『信頼関係の深まり・成長』と連むことが明らかになった。共感プロセスには、患者側の要因である「個室」「重症度」「患者・家族の受け止め方」、看護婦側の要因である「経験」「姿勢」「看護ケア体制」が影響していた。また、この共感プロセスの概念枠組みに洽って、本研究対象者の語った患者関係について段階別に3群に分類した情動的共感性尺度得点には有意差がなく、看護における共感スケール開発の必要性が示唆された。以上から、本研究ではふだんの実践で看護婦があまり意識していない共感プロセス、影響因子を明確にでき、トラベルビーや小代のモデルを犬枠において検証し、積極的関わりの部分をより明細化できたと考える。