著者
藤松 素子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.39-56, 2012-03-01

「地域福祉の時代」と言われて久しいが,地域福祉とはどのようなものであり,どのような要件のもとに成立しうるのかについての議論は曖昧なまま,個別の実践に対する評価,援助技法についての効果測定がなされているのが現状である。また,近年,国家や地方自治体に対応困難な地域課題を地域住民の自発的な活動 (「新たな支え合い」) 等により解決することを期待する政策が展開されている。そもそも,地域福祉は国家政策と切り離して成立しえるものではない。コミュニティが崩壊・弱体化した日本社会において,地域福祉を推進していくためには,私たちの地域生活基盤を支える国家政策,地方自治体政策が機能していることが必要条件となる。また,地域福祉促進の重要な担い手である社会福祉協議会が本来的な機能を遂行していくための政策を持ち得ているのか,地域福祉計画が地域住民の生活を維持・発展させていくために機能しているのかについても批判的な検討を深めていく必要がある。