著者
藤林 沙織 渡邊 誠
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.145-169, 2019-06-27

スクールカーストと呼ばれる現象を,当事者はどのように体験したのか,そして,それはどのような影響を及ぼしたのか,ということを明らかにする目的で,女子大学生三名に対して回顧的インタビュー調査を行った。スクールカースト体験においては,上位層の目を気にして中下位層の生徒が窮屈な日々を過ごすこと,上位層に声が届かないことが心理的負担たり得ること,といった否定的経験とともに,居場所の確保を容易にするという肯定的側面もあった。スクールカーストが発生している集団の内外に心理的な居場所があることが生徒を支えること,生徒同士,あるいは生徒教師間のつながりが支えになり得ること,および,スクールカースト決定要因との関連が薄い学校行事が,スクールカーストを越えた体験をもたらす場合があること,等が見いだされ,指導上の示唆となるものと思われた。