著者
藤田 哲夫
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.898, pp.138-141, 1963 (Released:2006-12-05)
参考文献数
3

ホウズキの幼植物の葉序は, まず2枚の子葉が対生し, そのすぐ上の葉からは2列互生になり, ついで1+2の交走斜列をもったらせん配列になる. ところが生長して花をつけるようになった葉条部では, 一節から大きさのやや異なる2枚の葉がほぼ100°の開度をもって双生し, しかも2葉間のすぐ上のところに1個の花をつけた異様な葉序が見られる. この1対の葉のうち比較的大きいものを+葉, 小さいものを-葉とすれば, 各節の+, -葉はけっして十字対生をなさず, それぞれ茎の側方にジグザク状に配列している. このようにホウズキの葉序が他の植物とはかなりちがっているのは, ホウズキの茎が単軸でなくて, 仮軸になっているからである. すなわち各節ごとに+葉の腋芽が発育して主軸状になって, それまでの下方の軸と入れかわり, 下方の軸の先端は側方にそれて花になり2葉間に終わっているのである. すなわち花をつけるようになった葉条部は, いわゆるanthocladiumを形成しているわけである.各腋芽には2枚の葉しかできず, その中の最初の葉 (-葉にあたる) が, 下方の軸の2番目の葉 (+葉にあたる)とともに対をなして1節に双生しているのである. 葉の発生の初期には, 1節につく+, -葉の 始原体の着生位置は上下にわずかながらへだたっているが, その後葉は著しく大きく生長しても葉の節間 はほとんど伸びないために, 生長後は同一の節上に生じたようになるのである. ときにその節間が伸びた ために2葉が対にならず, 上下に著しく離れている場合も見られる.