著者
中井 康光 難波 久佳 藤田 尚男
出版者
国際組織細胞学会
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.421-432, 1970
被引用文献数
4

甲状腺の系統発生的研究の一環として, 両生類 (トノサマガエル, 6月&sim;7月に採取) の甲状腺を電子顕微鏡を用い, その微細構造, <sup>125</sup>Iのオートラジオグラフィー, 酸性フォスファターゼ反応を調べた.<br>濾胞上皮細胞の微細構造は哺乳類と魚類のそれに似て粗面小胞体の発達がよく, 細胞表層部には, 哺乳類においてサイログロブリンを含み濾胞腔へ放出される分泌顆粒と考えられている subapical vesicles が存在する. カエルの甲状腺の特徴的構造は tonofilaments が非常に多く, また再吸収されたと考えられる大きなコロイド滴が豊富で, しばしばその中に線維状の構造がみられる. これはある種の魚類 (カサゴ, コブダイ, ギンザメ) でも報告されている.<br>マウスやラットと同じように, ゴルジ層板の一部, 小さな暗調顆粒, 大きなコロイド滴の大部分に酸性フォスファターゼの反応が認められた. ゴルジ装置で作られた小さな暗調顆粒 (一次リゾゾーム) が再吸収された大きなコロイド滴に融合して, コロイドを加水分解すると考えられる (コロイドは加水分解されてホルモンとなる).<br>高等動物やある種の硬骨魚と同じように, 血管内皮には多くの小孔が見られる.<br>高等動物と同じように, サイログロブリンのヨード化はおもに濾胞腔内または細胞表面で行なわれる.