著者
林 慶一 藤田 早紀 小荒井 千人 松川 正樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.747-764, 2017-09-15 (Released:2017-12-25)
参考文献数
53
被引用文献数
3 6

兵庫県に分布する篠山層群について,国際層序基準にしたがって下部を大山下層,上部を沢田層として定義した.篠山盆地に分布する篠山層群の地層は,7つの岩相に基づいて4つの岩相群にまとめられ,砂礫堆堆積物/放棄河道堆積物,流路州堆積物,氾濫原泥質堆積物,堤防決壊堆積物/自然堤防堆積物と解釈される.これらの岩相群の分布から,篠山層群の堆積環境は山間盆地で,周辺部から中央部にかけて河川流路から氾濫原へと移り変わる環境であったこと,堆積の初期には礫質河川の流路が卓越する環境で,その後氾濫原や自然堤防と堤防決壊堆積物の卓越する蛇行河川の環境へと変化したと解釈される.篠山層群を特徴づける赤色岩の粘土鉱物分析の結果,大山下層上部の氾濫原堆積物からカオリン鉱物が検出され,湿潤環境下での土壌化と解釈される.同じ堆積物中には乾燥気候の存在を示すカリーチも挟まれていることから,半湿潤~半乾燥の環境が示される.