著者
藤田 有加
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.275, 2010 (Released:2011-01-15)

【はじめに】高齢者に多くみられるアライメントの変化として、脊柱後弯姿勢(円背)が挙げられる。脊柱後弯姿勢とは、脊柱の矢状面の弯曲異常のことであり、主として胸椎部の後弯が増加したものを言う。曾田らは「円背を有する80歳以上の高齢者では%肺活量と最大吸気筋力が低下する」とし、脊柱後弯姿勢と呼吸機能の関係性について述べている。このことから、脊柱後弯姿勢から脊柱を伸展させ、姿勢を変化させると、呼吸機能にも変化が出ると予想される。しかし、姿勢の変化と呼吸機能の関連性について調べた報告はみられていない。そこで本研究は、座位姿勢における脊柱後弯姿勢を伸展方向に矯正した時の呼吸機能の変化を調査し、姿勢の変化が呼吸機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【対象】年齢65歳以上の高齢者女性30名を対象とした。なお、被検者には研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得た上で研究を開始した。【方法】安楽座位と努力伸展座位の2つの姿勢で、円背指数・胸郭拡張度・肺活量の測定を行った。脊柱後弯の程度を評価するために、形を自在に変形できる自在曲線定規を用いて円背指数の測定を行った。座位にてC7からL4までの脊柱後弯に沿って棘突起に定規を合わせた後、紙上にトレースした。弯曲のC7とL4を結ぶ直線距離をLcm、直線Lから弯曲の頂点までの距離をHcmとし、その割合を円背指数(H/L×100)として算出した。胸郭拡張度は腋窩部、剣状突起部第10肋骨部を測定した。肺活量の測定はフクダ電子株式会社製、電子スパイロメーターを用いた。統計処理として、対応のあるt検定を用いて、安楽座位と努力伸展座位での円背指数と肺活量を比較し、さらに円背指数と肺活量のそれぞれの変化率の相関をピアソンの相関係数を用いて行った。【結果】円背指数,肺活量ともに努力伸展座位において有意差がみられた(p<0.01)。また、安静座位から姿勢を矯正したときの円背指数の変化率と肺活量の変化率の間に相関が認められた(r=0.58、p<0.0001)。胸郭拡張度は剣状突起部のみ努力伸展座位で有意差がみられた。【考察】本研究の結果から脊柱後弯姿勢を有していても、脊柱を伸展させ、姿勢を変化させることができれば、呼吸機能は改善できることが示唆された。さらに姿勢の変化が大きいほど、呼吸機能の改善も大きくなるといえる。これは、体幹のアライメント不良が一時的でも改善された事で、胸郭で押しつぶされていた横隔膜が働きやすい状態になったと考えられる。また、短縮していた腹筋群の筋長が延長し、収縮が得られやすくなったためであると考えられる。今後は,この脊柱を伸展させた姿勢を日常生活の中でも持続できるよう、アプローチしていく必要があると考える。