著者
有田 和徳 山田 謙慈 藤田 浩史 鎌田 達 吉田 康洋 池尻 公二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.634-638, 1990-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14

CT, MRI, SPECTで検索し得た典型的な進行性核上性麻痺の1例を報告する.症例: 68才女性, 約2年前より動作や言語が緩徐となり, 転倒しやすくなつた. その後症状は安定していたが約20ヵ月後より痴呆が認められ, 歩行が不安定となり, 自発的な発語や動作が乏しく臥床状態が多くなつた. 1987年1月の入院時, 神経学的には核上性眼球運動障害, 皮質下痴呆, 頭部を後方に反り返らせる特異なdystonia, 病的反射を伴わない四肢の腱反射亢進, 四肢の著明なrigidity, 後方への転倒傾向が認められた.1)CTでは中脳の萎縮とともに大脳のびまん性の萎縮が認められた. 大脳の萎縮は約2年間の経過で進行が認められた. 2)MRI矢状断像によつて中脳, 橋被蓋の萎縮が明瞭に描出され, 画像診断上きわめて有用であつた. 3)SPECTでは脳幹, 大脳基底核ならびに前頭葉の血流低下が認められた.