著者
藤田 爲刀
出版者
国際組織細胞学会
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.31-36, 1951

巨嗅動物である二十日鼠の大腦皮質の Nissl 氏灰白の微視下神經原線維と神膠成分の量の割合をアツァン染色によつて觀察した. 大腦皮質の層のうちで, 第1層の表在層の Nissl 氏灰白は染色性が弱いが, 青調が最も強く, 即ち神經成分の神膠成分に對する割合は大である. しかし一般に大腦皮質の諸層間の差は決して大でない. 次に大腦皮質の表在層の Nissl 氏灰白の染色性の部位的差異はあまりないが, 表在層を除く第2-第5層全體の Nissl 氏灰白の染色性には屡ば所により著しい差が認められる. 中心後部, 頭頂部, 島部, 帶状部では青調が弱くて神經成分が比較的少く, 側頭部, 膨大後部, 海馬回ではそれがやや強いから神經成分が中等量で, 前頭部の前部, 中心前部, 後頭部では青調がなほ強く, 神經成分が更に大であると云へる. 特筆すべきは嗅球の皮質の Nissl 氏灰白であつて, これは大腦皮質のうちで最も神經原線維に富む.<br>大腦核なる尾状核とレンズ核の Nissl 氏灰白に於ける微視下神經原線維の存在の状態は大腦皮質の中心前部と同程度である.<br>視床外核の Nissl 氏灰白の神經成分の量は大腦皮質の側頭部のものと同樣で, 嗅覺關係の前核のものはこれに次で神經成分に富み, 神經線維が多く出入する内核のものはなほ一層それに豐かである.