著者
竹越 孝 遠藤 雅裕 藤田 益子 遠藤 雅裕 竹越 孝
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、近世中国語の信頼できるコーパスを構築し、それを存分に活用した研究を行うことにあった。我々がその対象として選んだのは、李氏朝鮮時代における中国語会話教科書『老乞大』の代表的版本と、清代後期を代表する白話小説『兒女英雄傳』である。これらを組み合わせることによって、元代から清代末期に至る北京語の通時的変化が一望できると考えたためである。スタート時にはプレーンテキストの入力はもとより、品詞情報・構文情報など種々の文法タグを付し、語彙表を作成するところまでを射程に入れていたが、実際に取りかかってみると、各版本を吟味し信頼に足る底本を選定するまでの段階で多くの時間が費やされることとなった。こうした文献学的研究によって我々の視野は格段に広がったものの、本格的な計量言語学的研究の領域にまで踏み込む余裕がなかったことは残念である。今後の課題としたい。研究成果報告書は資料編と論考編からなる。資料編には今回の研究資源の一つである竹越孝編「老乞大四種対照テキスト」を収めた。論考編には我々がコーパスの作成過程でなした文献学的研究と、コーパスを活用して行った語彙・語法研究を収めた。具体的には、遠藤雅裕「『老乞大』各版本中所見的「將」「把」「拿」-并論元明清的處置句-」、遠藤雅裕「《老乞大》四種版本裡所見的人稱代詞系統以及複數詞尾」、竹越孝「今本系《老乞大》四本的異同點」、竹越孝「論介詞"着"的功能縮小-以《老乞大》、《朴通事》的修訂為例」、藤田益子「関於『児女英雄傳』的鈔本-従詞彙方面的考察-」、藤田益子「関於在《児女英雄伝》中出現的"把"字句-"把"的賓語帯量詞"箇"」の6篇である。